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製造業や食品、医療などの分野において、液体の「流れ」を正確に把握することは製品クオリティを左右する重要な要素です。しかし、世の中の液体の多くは、水のように単純な動きをする「ニュートン流体」ではありません。

今回は、粘度が変化する特殊な性質を持つ「非ニュートン流体」に焦点を当て、その特徴からCFD(数値流体力学)解析での活用例までを詳しく解説します。

 

非ニュートン流体とは?ニュートン流体との決定的な違い

液体や気体などの流体は、その「粘度」がどのように変化するかによって、大きく2つのタイプに分けられます。

まずニュートン流体は、どれだけ激しくかき混ぜても、あるいはゆっくり動かしても、その物質自体の粘度は常に一定で変化しないという特徴を持っています。身近な例では、水や空気、アルコール、サラダ油などがこれに該当します。コップに入れた水をスプーンで回す際、回す速さを変えても手応えとしての「水のサラサラ感」が変わらないのは、粘度が一定であるためです。

これに対して非ニュートン流体は、外部から加わる力の強さや時間によって、液体の粘度がドラマチックに変化します。状況に応じてドロドロになったりサラサラになったりするのが最大の特徴です。たとえばケチャップは、容器を逆さまにしただけではなかなか流れてきませんが、容器を振ったり叩いたりして力を加えると、急に粘度が下がってスムーズに流れ出します。

このように、外部からの刺激に対して粘度が「一定」なのか「変化する」のかが、両者を見分ける境界線となります。

比較項目 ニュートン流体 非ニュートン流体
粘度(ドロドロ感) 常に一定(変化しない)   力の強さや時間で変化する
力の応答 加えた力に比例して流れる 力の入れ方で流れ方が極端に変わる
かき混ぜた時 抵抗感(重さ)はずっと変わらない 急に軽くなったり、逆に固まったりする
主な身近な例 水、空気、アルコール、サラダ油 ケチャップ、マヨネーズ、片栗粉、血液

ニュートン流体 非ニュートン流体 違い

非ニュートン流体の種類と特徴

非ニュートン流体は、その性質が「力の強さ(せん断速度)」に依存するのか、あるいは「力を加えている時間」に依存するのかによって、大きく3つのグループに分類されます。

1. せん断速度依存型

加える力の強さ(速度)によって粘度が変化するタイプです。

  • 擬塑性流体(ぎそせいりゅうたい): 力を加えるほど粘度が下がり、サラサラになります。絡まり合っていた高分子が流れに沿って整列するために起こります。例: ケチャップ、マヨネーズ、ペンキ。

  • ダイラタント流体: 強い衝撃を加えるほど粘度が上がり、ガチガチに固まります。粒子同士が急激な動きで噛み合うために起こります。例: 水溶き片栗粉、濡れた砂浜。

  • ビンガム流体: 一定以上の力を加えない限り、固体のように形を保ち、動かない性質です。例: 歯磨き粉、バター。

2. 時間依存型

「どれくらいの時間、力を加え続けたか」によって粘度が変わるタイプです。

  • チキソトロピー: かき混ぜ続けると徐々に粘度が下がり、放置すると元のドロドロに戻る性質です。例: 印刷インク、一部のペンキ。

  • レオペクシー: 振動を与え続けると、徐々に粘度が上がっていく性質です。極めて稀なケースです。

3. 弾性・粘弾性流体

液体の「流れる性質(粘性)」と、ゴムのような「戻る性質(弾性)」の両方を併せ持つ流体です。

特徴: 力を加えると変形しますが、力を抜くと少し元に戻ろうとします。例: 卵白、スライム、ポリマー溶液。

非ニュートン流体のCFDシミュレーションを行う理由とは?

非ニュートン流体の物理特性が極めて「予測困難」かつ「非線形」である点にあります。水のような粘度が一定の流体とは異なり、非ニュートン流体の粘度は、せん断速度(受ける力の大きさ)や時間によって劇的に変化します。その結果、同一容器内であっても、場所によって流体の「ドロドロ感(稠度)」が全く異なる状態になります。

従来の経験式では単純な平均値しか算出できず、攪拌槽の死角や複雑な配管の分岐、ポンプの起動圧力といった実際の工況においては、ほとんど役に立ちません。このような空間的な粘度の不均一性により、エンジニアが直感や数式だけで流体の挙動を正確に把握することは極めて困難です。

CFDソフトウェアを用いたシミュレーションの最大のメリットは、ブラックボックス化しがちな流動プロセスを完全に「デジタル化」および「見える化」できることです。流場を数百万の微細なメッシュに分割することで、各局所のリアルタイムな粘度、速度、圧力分布を精密に捉えることが可能です。これにより、エンジニアは「滞留領域」や、過度なせん断による製品の変質リスクを正確に特定できます。さらに、このような「デジタルツイン」によるシミュレーションは、電池スラリーや医薬品コーティング剤といった高付加価値原料の研究開発における試作コストを劇的に削減します。実機投入前にバーチャル環境でポンプモーターの選定最適化や流路設計のイテレーションを行えるため、生産システムの安定稼働を確保し、開発期間を大幅に短縮できます。

ZWPHOENICS:非ニュートン流体解析の最適解

ZWPHOENICS (旧:PHOENICS)が非ニュートン流体のシミュレーションに理想的である理由は、数多くの実績を持つ非ニュートン流体モデル(構成方程式)を標準内蔵している点にあります。せん断希薄化(擬塑性)、せん断増粘(ダイラタント)、および降伏応力を持つ複雑な流変挙動(レオロジー特性)を容易に定義でき、ユーザーは独自のプログラミングを行うことなく、モデルの選択やパラメータの設定を完結できます。

PhoenicsによるCFD解析結果の可視化イメージ

同時に、その数値ソルバーはせん断速度による粘度の急激な変化に対して特殊な処理が施されており、高粘度かつ強い非線形性を伴う工況下でも、優れた収束性と計算安定性を維持します。泥水、血液、食品、ポリマー流など、多様なエンジニアリング事例を通じてその精度は既に検証済みです。さらに、ZWPHOENICS は複雑な形状のモデリング、混相流、伝熱モジュールとのカップリングが容易であり、非ニュートン流体の流動に伴う熱交換や相間相互作用が絡む課題に対しても高い適応力を発揮します。実際の設計・最適化プロセスにおいて、極めて効率的かつ信頼性の高いツールとなります。

興味のある方は、ZWPHOENICSを使った CFD 体験や詳細情報について、ぜひお問い合わせください。設計改善や学習・研究用途に合わせたサポートをご提供します。

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