近年、工場や建築物における設備設計はますます複雑化し、多品種少量生産や省エネ設計、さらには施工現場での効率化といった課題が突きつけられています。その中で注目を集めているのが「設備CAD」です。

設備CADは、配管や電気、空調といった“目に見えにくいが欠かすことのできないインフラ”の設計を支援する専用のCADツールで、従来の汎用CAD機械設計CADの基本機能では実現しにくかった効率化や高精度化を可能にしています。

今回は、設備CADの特徴、代表的なソフトウェアを解説します。導入の検討にお役に立てば幸いです。

 

設備CADとは?

設備CADは、建築物や工場の設備を設計するための専用ソフトです。対象となる設備は幅広く、配管、ダクト、電気配線、給排水設備、空調機器、さらに生産ラインに付帯する搬送設備などが含まれます。

設備CADを説明する画面

これらは建物や機械と違って“空間をまたがる存在”であり、限られたスペースを有効に活用しつつ、干渉や施工性、安全性を考慮しなければなりません。そのため、設備CADは単なる作図ツールではなく、3D空間での配置検討や施工性シミュレーションを重視する設計支援システムです。

従来、配管や電気の図面は2D CADで作成されることが多かったですが、平面図や断面図だけでは実際の干渉を見落とす可能性が高く、施工現場でトラブルが発生することもしばしばありました。これに対して3次元の設備CADは、3Dモデル上で設備を配置することにより、設計段階で干渉や施工性を検証できる点が大きな強みです。

3D CAD「ZW3D」で干渉チェックをしている画面

3D CAD「ZW3D」で干渉チェックをしている画面例

設備CADの特徴

専門ライブラリの搭載

設備設計に必要な配管継手、ダクト部材、電気記号などがあらかじめ用意されており、ユーザーは部品を選択して配置するだけで効率的に設計が進められます。規格(JIS、ISO、DINなど)に対応した部品も充実しているため、国際案件やグローバルな設計にも対応可能です。

自動ルーティング機能

始点と終点を指定すると、最短ルートで配管やダクトを自動生成できます。障害物を回避したルートを提案する機能も搭載されています。

材料・数量の自動算出

配管の長さ、継手の数、使用する材料の数量を自動で拾い出す機能が備わっています。積算や購買業務に直結するため、見積もり精度の向上につながります。

データ連携

近年の設備CADは、建築分野のBIM(Building Information Modeling)や製造分野のPLM(Product Lifecycle Management)とのデータ互換性があります。これにより、設計情報を施工や保守までシームレスに活用できます。

その他

その他、一般的な3D CADに機能搭載されている干渉チェック機能があり、3D空間上で異なる設備同士の衝突を自動で検出できます。これにより施工現場での手戻りが減り、コスト削減や工期短縮に直結します。特に多層階の建物や複雑なプラント配管では必須の機能といえます。

また、3Dモデルから施工用の平面図、断面図、アイソメ図を自動的に生成可能で、従来のように一から描き直す必要がありません。これにより設計から施工図作成までの工数を大幅に削減できます。

3D CAD「ZW3D」で図面を作成している画面

3D CAD「ZW3D」で図面を作成している画面例

設備CAD導入のメリット

設備CADを導入することにより、企業は設計から施工、さらには保守に至るまで多くの恩恵を受けることができます。大きな効果として挙げられるのは、設計工数の削減です。従来、配管やダクトのルート設計や施工図の作成には多大な時間を要していましたが、設備CADでは専門ライブラリや自動ルーティング機能を利用することで、作業の大部分を効率化できます。これにより、設計者は手作業に追われることなく、より付加価値の高い検討業務に集中することが可能となります。

また、設計精度の向上も見逃せないメリットです。3Dモデルを用いた干渉チェックや規格対応部品の活用により、施工段階でのトラブル発生を未然に防ぐことができます。結果として、現場での手戻りが減少し、工期短縮やコスト削減に直結します。さらに、配管や機器の長さ・数量を自動的に拾い出す機能によって、見積もりの精度も大幅に向上します。過剰な材料発注や不足による工事遅延といった問題を防ぎ、資材コストの最適化が可能になります。

設備CADは品質保証の観点からも有効です。施工性やメンテナンス性を事前にシミュレーションできるため、完成後の設備が長期にわたり安定稼働するかどうかを設計段階で検証できます。保守部門にとっても、機器や配管に属性情報が付与されていることで、部品交換や点検の際に必要な情報が即座に把握でき、ライフサイクル全体での効率化につながります。

さらに、近年注目されるデジタルトランスフォーメーション(DX)においても、設備CADは重要な役割を果たします。BIMやPLMといったシステムと連携することで、設計情報を施工や保守にシームレスに引き継ぐことが可能となり、部門横断的なデータ活用を実現します。設備CADは単なる設計ツールを超え、企業全体の業務改革を支える基盤となります。

3D CAD「ZW3D」で設備設計をしている画面

3D CAD「ZW3D」で設備設計をしている画面例

設備用3D CADソフトの紹介

ZW3D

ZW3Dは、主に機械設計や金型設計に適した3D CAD/CAMソフトで、設計から加工プログラム作成までの一連作業をシームレスに行うことができます。ここ最近のバージョンでは、アセンブリ設計の効率化や配管ツール・構造モジュール機能が強化されており、設備設計を効率的に行えるようになってきています。

ZW3Dの操作画面1

ZW3Dの操作画面2

分かりやすい操作画面となっており、初心者でも比較的習得しやすくなっており、価格も比較的安価となっているため、初めて3D CADを導入する中小企業やコストを抑えたいユーザーによって魅力的な選択肢です。

Webページから30日間の無料体験版をインストールして試すことができます。30日間はモデリングに関するフル機能を使用することができますので、ぜひ、お試しください。

【公式サイト】ZW3D 2026の無料体験版をダウンロード

https://www.zwsoft.co.jp/download-form/zw3d-2026/

 設備設計において、3DCADソフトとして何を選択するかは、ご自身の目的や予算、運用面などを考慮して考えていただくと良いと思います。無料の体験版をインストールして実際に操作感を確認するのも良いでしょう。ぜひ、後悔しない選択をしていただければと思います。この記事が少しでも参考になれば幸いです。

Rebro

BIMに対応した直感的な3D設計が可能な建築設備専用3DCADソフトです。モデルに属性情報を付与でき、BIMデータとして建築・設備双方で活用可能です。IFCやRevit、Archicadなど他のBIMソフトとも高い互換性を持ち、建築プロジェクトの協調設計やデータ連携に対応しています。

日本の建築基準や施工慣習に適した機能が充実しており、配管・電気・空調などの設備設計を効率的に行えます。高精度な3Dモデルを作成し、設計から施工までの情報をシームレスに連携できます。1つの3Dモデルデータから各種図面(平面図、断面図、詳細図など)を生成でき、1か所の修正が関連する全ての図面に自動で反映されます。コマンドを起動せず図形を作図・編集できる「ハンドル機能」など、初心者でも比較的扱いやすくなっています。し、建築設備設計に特化しているため、他分野の設計には不向きです。

WEBサイト

https://www.nyk-systems.co.jp/product/feature

CADWe’ll Linx

 設備業界で広く利用される「CADWe’ll Tfas」の後継となる建築設備専用3D CADです。国内の設備設計ワークフローを強力にサポートする次世代型BIMアプリケーションです。

モデル内に含まれる属性情報を活用することで、発注や系統の管理、数量の自動拾い出し、帳票の作成といった業務を効率化・自動化できます。その結果、設計から施工、さらに維持管理に至るまでの各工程で生産性を大幅に高めることが可能です。また、建物全体を一つの3Dモデルで統合的に管理する「ワンモデル運用」に対応しており、複数担当者による同時作業や他のBIMソフトとのデータ連携もスムーズに行えます。さらに、配管・電気・空調といった設備要素に付与された属性情報を活かして、各種データを一元的に管理することができます。ただし、建築設備設計に特化しているため、他分野の設計には不向きです。

WEBサイト

https://www.daitec.jp/catalog/linx/linx_01.html

iCAD SX

iCAD SXは、機械装置・生産設備設計向けの3D CADソフトです。独自のCADエンジンによって、数百万点にもおよぶ膨大な部品を扱う大規模アセンブリでも、高速に処理できます。建築設備よりも産業機械や生産ライン、装置そのものを設計するためのツールとして利用されます。

ダイレクトモデリング方式を採用しており、直感的でシンプルな操作によって形状を素早く作成できます。一方で、自由曲面のモデリング機能は苦手ですが、装置や設備などの機械設計に最適化されたCADです。また、干渉チェックや動作シミュレーションなどの検証機能も充実しており、設計段階で組立や動作上の不具合を早期に把握・改善することが可能です。多様なデータ形式をサポートし、解析ツールやCAMとの連携も可能で、設計から製造までの工程をトータルに支援する3D CAD環境となっています。

WEBサイト

https://icad-portal.com

IRONCAD

主に機械設計や生産設備の設計に特化した3D CADソフトです。独自の「カタログ」から用意された3Dモデルをドラッグ&ドロップで挿入し、「トライボール」と呼ばれる独自の移動ツールにより、3Dモデルの位置や角度調整が非常に簡単に行えます。生産ラインのロボットアームや自動搬送装置、工場内で使われる治具などの設計に威力を発揮します。

作業履歴を残し管理できるパラメトリックモデリングと作業履歴にとらわれず面を直接編集するダイレクトモデリングの両方に対応しており、カーネルについてもACISとParasolidの両方に対応しているため、他社製CADとのデータ互換性に優れ、編集作業も容易に行えます。

WEBサイト

https://www.ironcad.jp

まとめ

メリット デメリット
ZW3D CADとCAMが統合されており、設計から加工までをスムーズに連携して作業ができる。配管ツール・構造モジュール機能を搭載。比較的安価に導入がしやすい。 建築設備設計専用ではないため、設備特有の機能は少ない。
Rebro 設備専用機能が豊富で、整合性のとれた3Dモデルベースの設計が可能。図面連動、干渉チェック、集計機能、BIM連携に強い。直感的で比較的動作が軽い。 建築設備設計に特化しているため、他分野の設計には不向き。
CADWe’ll Linx ワンモデル運用によるデータ一元管理で、発注・帳票作成などを自動化し、設計から維持管理までの業務効率を大幅に向上できる。 建築設備設計に特化しているため、他分野の設計には不向き。
iCAD SX 大規模アセンブリの高速処理に強い。ノンヒストリー・ダイレクトモデリングで直感的な操作とスピーディな設計変更が可能。電気・機械の統合設計にも対応。 建築設備設計専用ではないため、設備特有の機能は少ない。操作性が独特なため慣れが必要。
IRONCAD 直感的な操作性に優れ、部品の位置決め・移動・回転が容易。履歴あり/なしやパラメトリック・ダイレクトを使い分けながらハイブリットなモデリングが行える。 建築設備設計専用ではないため、設備特有の機能は少ない。操作性が独特なため慣れが必要。

筆者プロフィール(小原照記 おばらてるき)

いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事長も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動や企業へ技術的なサポート支援もしている。WEBブログやSNS、YouTubeを「テルえもん」という名前で情報発信中。

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