射出成形は、樹脂製品の量産に欠かせない加工方法のひとつであり、製品形状の最適化と金型設計の質が、製造効率やコストに直結します。このため、3D CADには単なる形状モデリングにとどまらない、金型設計業務全体を支援する機能が求められます。

近年、SOLIDWORKSのような汎用性の高い3D CADが広く導入され、金型設計の支援機能も成熟してきています。

一方で、ZW3Dは、CADとCAMを統合したプラットフォームとして進化し、特に射出成形型の設計においては、設計から部品構成、加工データ作成までを一貫して対応できる環境を提供しています。

本稿では、SOLIDWORKSの設計支援機能の特長に触れながら、ZW3D Moldモジュールが持つ具体的な金型設計支援機能に焦点を当て、設計者目線での活用価値を掘り下げていきます。

SOLIDWORKSの射出成形型設計支援機能(Mold Tools)

SOLIDWORKSは直感的な操作性と幅広い設計領域への対応力で知られており、Mold Toolsというモジュールを通じて射出成形型の基本設計を支援しています。

主に以下のような機能があります:

●  パーティングラインの作成

  抜き方向を定義すると、金型の分割線を自動的に生成。手動調整にも対応。

● コア/キャビティの分割

  パーティング面を定義し、形状をワンクリックで中子側・キャビティ側に分割。

● パーティングブロックの生成

  分割された形状に基づいて、型の構造ブロックを作成。

● Toolboxによる標準部品の配置

  ねじやピン、ダウエルなどの汎用部品を標準ライブラリから配置。

● ライブラリ作成

  プレートやピン、エジェクタなどは外部よりダウンロードし、ライブラリ化が可能です。

これらの機能により、SOLIDWORKSでは射出成形型、特に簡易型や試作型の迅速な設計を可能にし、特に金型設計初心者にとって習得しやすい環境を提供しています。

筆者のように機械設計者であっても射出成形型設計を行いやすい環境だといえます。

ZW3D Moldの特長:金型設計を一気通貫で支援

ZW3DはCADとCAMがシームレスに統合された設計環境を持ち、射出成形型に特化した「ZW3D Mold」モジュールによって、設計工程全体を効率化します。以下にその主な特長を紹介します。

製品形状からの自動分割機能

ZW3Dでは、抜き方向を指定するだけで、製品形状に対するパーティングラインと分割面を自動生成。オーバーハングや中間面といった複雑な形状でも高精度に対応でき、分割後のコア/キャビティのソリッドもワンクリックで得られます。

スライド・リフターの配置支援

アンダーカット処理に必要なスライドやリフターも、標準部品ライブラリから選択してすばやく配置できます。干渉チェックや動作確認もビジュアルに行えるため、設計初期段階から完成度の高い構造設計が可能です。

冷却回路およびゲート/ランナー設計

冷却チャネルは3D空間上でパスを引くだけで作成可能。製品レイアウトに合わせた冷却設計が効率よく行えます。ゲートやランナーも自動生成支援があり、初期設計のスピード向上に貢献します。

豊富な標準部品ライブラリ

MISUMIなどの主要金型部品をライブラリ化することが可能です。

プレートやピン、エジェクタなどをドラッグ&ドロップで配置可能です。

部品表の自動生成にも対応しており、調達業務ともスムーズに連携できます。

標準部品ライブラリ

標準部品ライブラリ

図1.標準部品ライブラリ

外部CADデータへの対応力:ヒーリングとフィーチャー認識

他CADで作成された製品データや中間ファイル形式(STEP・IGES)を金型設計に使うケースが非常に多くあります。

これらのデータをインポートする場合、不正面や不正エッジといったエラーが起こる頻度は少なくありません。インポートした際のエラー処理は設計スピードにとって重要な課題です。

筆者もこのエラーに悩まされることは少なくありません。

ZW3Dではこの点にも十分な対応力があると言えます。

ヒーリング機能

インポートされたSTEPやIGESデータに対し、面の不連続やエッジギャップを自動修復。 ソリッド化できないエラーも高確率で解消可能です。

ヒーリングによるオープンエッジの検索

図2. ヒーリングによるオープンエッジの検索

欠落面修復設定(エッジを選択)

図3.欠落面修復設定(エッジを選択)

エッジのループを自動で設定し面を修復

図4.エッジのループを自動で設定し面を修復

 

面の修正機能としては、「サーフェスのトリム平面」「ルールドサーフェス」など様々な面の修復機能を持っています。

外部データから樹脂化設計を行う際に頻度が高いこの面修復などの作業の効率化が図られることはとても便利」です。

フィーチャー再認識機能

履歴のないデータでも、穴、ポケット、リブ、フィレットなどを自動的に認識し、編集可能な形状として再構築機能があります。

これにより、外注先からのデータや既存資産を有効に活用し、型設計業務への落とし込みが効率化されることが可能となります。

SOLIDWORKS vs ZW3D:設計者目線での比較ポイント

射出成形型設計に関わる主な項目について、SOLIDWORKSとZW3Dの対応状況を整理します。

(※機能保証をするものではなく、筆者の経験と評価に基づきます。)

設計項目 SOLIDWORKS(Mold Tools) ZW3D Mold
パーティングライン生成 ◎ 自動提案+調整可能 ◎ 高精度な自動生成
コア/キャビティ分割 ◎ ワンクリックで可能 ◎ 複雑形状にも対応
スライド・リフターの配置

△ 手動設計が基本

標準機能として実装はされていません。

◎ 標準部品から配置支援
冷却回路設計

△ モデリングで対応

専用ツールが実装されてはいません。

◎ 専用ツールで効率設計
ゲート/ランナー設計

△ 手動設計が基本

◎ 自動生成支援あり
標準部品ライブラリ

◎ Toolboxで汎用部品に対応

ライブラリ作成と登録が可能です。

◎ 金型向け部品を多数内蔵
他CADデータの修復

△ 手動補正が前提

◎ 自動ヒーリング機能あり
フィーチャー再認識

△ 穴の検出は可能

◎ 主要フィーチャーを再認識

表1. SOLIDWORKSとZW3Dの射出成形型設計対応状況

まとめ

設計環境の選択肢を広げる

SOLIDWORKSは多くの実績を持つ汎用3D CADとして、金型設計においても安定した運用が可能です。特に他部署や外注先とのデータ連携や、企業全体での設計環境の統一といった観点からは、大きな強みを持っています。

一方、ZW3D のZW3D Moldは金型設計業務における作業効率を目的に設計された設計環境であり、複雑形状の処理や、製品設計から加工までの流れを短時間で構築するには非常に適しています。

射出成形型の設計をどこまで求めるのかといった設計業務の性質や、担当者のスキル、組織の業務フローに応じて、目的に合ったCADツールを選択することが、金型設計の品質とスピードを両立させる鍵となりますが、ZW3D MOLDは、中小企業や試作中心の現場にとって「コストパフォーマンスのよい射出成形型設計CAD」といえるのではないでしょうか。

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筆者プロフィール

土橋 美博

半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。

・ITコーディネータ

・二級知的財産管理管理技能士

・有限会社スワニーCIO

・マッケン・キャリアコンサルタンツ株式会社 パートナーエグゼクティブコンサルタント 3D設計プロモーター

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