開発設計部門が取り組むフロントローディング
開発設計部門によって設計される装置(機械)を例にすると、装置の組み立て調整時に次のような問題を抱えることが少なくありませんでした。
その一例ですが、
- 剛性不足
- 軽量化を必要とするものに対して過剛性(軽量化不足)
- 熱膨張による部品精度不足
- 振動による精度への影響
といったものがあげられます。
「組み立て調整時に・・・」と記述したように、これらは従来は開発設計時に十分考慮したはずにも関わらず生じる問題で、実物が出来上がった後に問題が生じることで、手戻り作業といわれる負荷は時間(工数)、費用ともに大きな影響を生じるものとなっていました。
そこで生じていたものは、
- 設計修正
- 組み立てたものを再度分解する
- 部品再製作
- 再組立て
- 納期延長もしくは工数投入による納期確保
これらが、3D CADの普及によって、開発設計段階で出来る検証が可能となり、フロントローディングといわれるように、その負荷は前工程(開発設計)に移動するものの、後工程からの手戻りを低減することで、全体の工数を削減できるものとなりました。
しかし、このCAEもかつては高額で、誰もが運用できるものではありませんでした。
その変遷を振り返ります。
CAEの変遷
2000年以前のCAEの状況
【特徴】
- 高額なシステム(主にワークステーション)で使用
- 商用ソフトウェアは、大企業向けに提供されていた
- シミュレーション精度は高かったが、計算資源や処理時間が非常に高かった
- インターフェースはコマンドベースであり、操作は難易度が高い専任者向け
【代表的なCAEソフトウェア】
- ABAQUS:構造解析、非線形解析に強み
- ANSYS:構造解析や熱解析が強み
- MSC Nastran:構造解析や振動解析が主流
- Fluent:流体解析専用のツール
- Patran:主に有限要素解析(FEA)の前処理に使用
【業界の動向】
- 自動車、航空宇宙、重工業が主要なユーザーであり、大規模解析が行われていた
- 高精度な解析を行うために、ハイエンドワークステーションやスーパーコンピュータが必要だった
- 解析の専門家が主に使用しており、CAEを使いこなせるエンジニアは限られていた
【価格】
- 高額なシステムと高額なライセンス(数百万円~数千万円)
- 年額保守費用も数百万円で、企業にとっては非常に高コストな投資
2000年以降のCAEの変遷
【特徴】
- コンピュータの性能向上(マルチコアプロセッサやGPUの普及)により、 解析速度が向上
- グラフィックインターフェースにより専門的な知識がなくても直感的に操作できる
【代表的なCAEソフトウェア】
-
ハイエンド
ANSYS Workbench:構造、熱、流体、電磁場の解析を統合的に提供
Abaqus/CAE:複雑な非線形解析や動的解析に強み
-
ミッドレンジ
Altair HyperWorks:最適化解析や構造解析、流体解析を統合的に実行できるプラットフォーム
SolidWorks Simulation:設計ツール(SolidWorks)との統合
※ハイエンドとミッドレンジの分類は筆者主観
【業界の動向】
- ミッドレンジCAEでは中小企業にも手の届く価格帯になり、CAEツールが導入可能となった
- ミッドレンジCAEの普及により製品開発の早期段階から解析を行うことが可能となった
-
ZW3Dの最初のリリース(2000年初頭)
-
2008年:ZW3DにCAE機能が統合
-
2010年代:解析機能の拡張
- 設計と同時に製造方法や材料調達、品質管理のことも一緒に検討する
- 設計途中でも製造担当や購買担当が意見を出す
- 問題が早めに見つかるので、全体の開発期間が短くなる
【価格】
ソフトウェアライセンスが大きく安価になった(ミッドレンジCAE)(~数百万円)
このように、3D CADの普及により、これまで専任者でなければできなかった解析(CAE)が、
3D CADとCAEは設計者CAEというかたちで、「いったりきたりする仕組み」として着目されるようになりました。
設計者による設計者CAEとしてブームになり始めたのもこの頃以降です。
一部の3D CADユーザーしか使うことができなかったCAEが中小企業のユーザーも使うことができるようになったわけです。
(設計者CAEという概念は2000年初頭から世に唱えられたといわれています。)
さて、ZW3DのCAEはどうでしょうか?筆者が調べてみました。
ZW3DのCAE機能の導入の流れ
初期のZW3Dは、主にモデリングと設計支援に特化したCADツールであり、CAE機能は最初は未搭載
2008年にリリースされたバージョンから、ZW3Dは設計とシミュレーションを統合するというコンセプトに基づいて、構造解析機能を組み込み。 設計者はそのままCAE機能を使って、シンプルな構造解析や応力解析を実行可能となった。
CAE機能をさらに強化し、流体解析や熱解析などの機能を追加。
このように開発設計部門でCAEが使われるようになると、その成果も社内で見えるようになります。
これにより、「3Dデータによってこんなこともできるのでは?」という意見が社内のあちらこちらから出るようになります。
もちろん3D CADに対して懐疑的な人たちがいたことも事実です。
しかし、その有効性に期待が持たれると、3Dデータが製造業に関わる企業の中で一気通貫のデータとして扱われるようになっていきます。
こうした取り組みは別の用語で「サイマルテニアスエンジニアリング」ともいわれ、大手企業を中心に理想の管理/運用環境として企画段階から保守、廃棄までをサポートしながら製品の最適化を考えるPLMシステムの導入が広がっていきます。
サイマルテニアスエンジニアリングとは
製品の設計・開発と、それに必要な製造準備などを同時に進める方法
PLMとは
製品が生まれてから終わるまで、すべての情報を一元管理して、効率よく開発・製造・廃棄までサポートする仕組み
筆者もまた、この期待値の中で、3D CADデータによる管理/運用する大規模なシステムとしてPLMの重要性についてプロジェクトとして考えていきました。しかし、すが、中小企業に所属していた筆者にとっての問題は、PLMが人・モノ・カネといわれるリソースがなかったということです。
しかし、リソースがない中でも、製品の構成を示すBOMの効果的な運用方法や、その可視化技術は
手が届かないものではありませんでした。
PLMといわれる仕組み自体は製造業の全体最適を目指すものでしたが、筆者は部分最適を繰り返すことで全体な効果につなげていく方法をとることができると考えていたわけです。
このようなことが3D CAD導入やその後の3D CAD推進の基本的な考えになるわけですが、
次回以降では、このプロジェクトの進め方について説明をしていきます。
筆者プロフィール
土橋 美博
半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。
・ITコーディネータ
・二級知的財産管理管理技能士
・有限会社スワニーCIO
・マッケン・キャリアコンサルタンツ株式会社 パートナーエグゼクティブコンサルタント 3D設計プロモーター

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