国土交通省が発注する土木設計業務の成果図面や、工事発注図として電子納品するCADデータには、共通の作成ルールである「CAD製図基準」が適用されます。特に最新版では、電子納品の運用に即した構造化・標準化が強化されており、実務における遵守の重要性がますます高まっています。
本記事では、設計者・施工業者・CAD操作者が最新の基準を正しく理解し、効率的に活用できるよう、主要内容から更新点、実務上のポイントまで分かりやすく解説します。
国土交通省CAD製図基準の主要内容
国土交通省のCAD製図基準は、電子納品におけるデータの統一性・再現性を確保するために定められた重要なルールです。図面の形式からフォルダ構成、作図方法まで細かく規定しており、設計・施工業務の品質向上と情報共有の効率化に大きく貢献します。主要な内容は次のとおりです。
ファイル構成とフォーマット
- ファイル形式(SXF標準)
国土交通省の電子納品では、SXF形式(P21)の使用が義務付けられています。SXFは、日本国内の建設分野で標準化されている交換用フォーマットであり、異なるCADソフト間でも図面情報を正確に共有できます。
- フォルダ構成
成果品を一元的に管理するため、フォルダ階層構造やファイル命名規則が細かく規定されています。これにより、発注者側が成果品を迅速に確認でき、後工程の運用もスムーズになります。
- 圧縮形式
図面データや添付資料は、SXF(P2Z)形式など、基準で定められた手順で梱包・圧縮する必要があります。
作図規約
- 図面サイズと尺度
図面の「正位」(長辺を横に置く)が原則で、利用可能な図面サイズや尺度範囲も定義されています。
- 線種と文字
線種・線幅、文字フォント、文字サイズはすべて統一規格で定められており、読みやすさと再現性を確保するためのルールが設けられています。
- 輪郭と図郭
図面には必ず外枠(輪郭線)を設定する必要があり、そのライン幅や外側余白の大きさも規定されています。
データレイヤと属性情報
- レイヤ構成
CAD製図基準の中でも極めて重要な項目です。道路、構造物、地形など、各情報を規定されたレイヤ名・コードに従って配置しなければなりません。正しいレイヤ分けは後工程のCIM/BIM連携にも大きく影響します。
- 属性情報
SXF Ver.3.0以降でサポートされる属性ファイルを活用することで、工事番号、責任主体、部材情報などの非図形データを図形オブジェクトに紐付けできます。これにより、図面の検索性や管理効率が大幅に向上します。
最新CAD製図基準の公表時期と主な変更点
最新版は2017年3月29日(平成29年3月)に公表され、同年4月以降に契約した国土交通省直轄の土木工事・設計業務に適用されています。
今回の改定で示されたCAD製図基準等の主なポイントは、大きく以下の3つに整理できます。
CADデータのファイル命名規則の変更
CAD製図基準におけるファイル名の命名規則について、作図内容をより明確に把握できるよう、日本語を記入できるユーザ定義領域(原則として図面名を記入)が新たに設けられました。これにより、ファイル名から図面内容を直感的に理解しやすくなり、関係者間での情報共有が大幅に向上します。
さらに、フォルダ内で図面目録の順番に沿ってソートしやすくするため、図面番号をファイル名の先頭に配置するなど、命名規則の見直しも実施されました。こうした変更は、図面の審査・保管・追跡をより効率的にすることを目的としたものです。

CADレイヤ命名規則の変更
レイヤ名称においても、従来より柔軟に情報を付加できるよう、ユーザ定義領域に日本語を記入できる仕組みが追加されました(例:レイヤの用途や対象物を日本語で明記)。

これに合わせて、運用ガイドラインには「ユーザ定義領域の活用方法」に関する補足説明が追記され、実務で迷わないための指針がより明確になっています。
同一工種内でのレイヤの統一
特に土木分野において、工種ごとにレイヤ体系を統一するよう、基準内容が再整理されました。

上記のように工種別のレイヤ体系が明確化されています。これらの新しいレイヤ構成一覧は、基準の付属資料や運用ガイドラインに追加され、プロジェクト間でのデータ整合性が向上しました。
レイヤ体系の統一は、将来的な3Dモデルの統合管理やCIM/BIMの情報連携を円滑にする基盤にもなっており、今後の高度なデータマネジメントへの移行を支える重要な改定といえます。
CAD製図基準よくある質問
どのようなソフトウェアでSXFに変換できるのか?
ZWCAD、AutoCADなど、多くのCADソフトがSXF形式での出力に対応しています。たとえばZWCADでは、DWGファイルを簡単にSXFへ変換することが可能で、一般的な操作手順は以下のとおりです。
1. ZWCADを起動し、変換したいDWGファイルを開きます。
2. メニューまたはコマンドラインに「DWG2SXF」を入力して、「SXFへのDWG一括変換」を選択します。
3. ファイル形式P21またはSFCを選択,国交省の電子納品の多くはP21を利用しますが、発注条件に従って選択します。
4. 保存先とファイル名を指定。電子納品では図面番号や図面名の命名規則に注意が必要です。
5. [OK]を押すとSXFファイルが生成されます。

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SXFとはどのような形式で、DWGと何が違うのか?
SXFは、日本の建設・土木分野で採用されているCADデータ交換専用の標準形式です。国土交通省の電子納品に必須で、線種・レイヤ・文字などの仕様が統一されているため、どのCADソフトでも同じ見た目で再現できる点が特徴です。また、最新基準ではユーザ定義領域で日本語も使用でき、図面名やレイヤ名の管理がより分かりやすくなっています。
DWGは、AutoCADを中心に世界で最も広く使われている汎用CADフォーマットです。作図・編集の自由度が高く、設計業務に適していますが、ソフトごとの拡張要素が多いため、他ソフトで開くと表示差や互換性の問題が生じることがあります。そのため、公共工事のように再現性が求められる場面ではSXFが採用されています。
| 項目 | SXF | DWG |
| 主用途 | 電子納品・データ交換 | 設計・作図作業 |
| 標準規格 | 国土交通省標準 | AutoCAD系標準 |
| 再現性 | 非常に高い |
ソフト間で差異があり |
| データ構造 | P21/SFC | バイナリ |
| 日本語対応 | 全角使用可 | ソフト依存 |
| 利用場面 | 納品・審査 | 編集・モデリング |
| メリット | 標準化・互換性 | 柔軟で高機能 |
| デメリット | 編集に不向き | 互換性が不全 |
まとめ
国土交通省のCAD製図基準は、電子納品の高度化やCIM/BIM連携を見据えた、統一性と再現性を担保するための重要なルールです。特に最新版では、SXF標準化・属性情報の活用・作図規約の明確化が大きなポイントとなります。
設計者・施工者・CADオペレーターが基準を正しく理解して運用すれば、図面品質の向上だけでなく、業務効率化・エラー削減・情報共有の強化にもつながります。電子納品が一般化する現在、必ず押さえておくべき基準といえるでしょう。