機械設計とは、目的や要求を具体的な構造として形にし、機能を実現するための設計活動です。
単に図面を描いたり3Dモデルを作ったりする作業ではありません。
「考える」「選ぶ」「伝える」という思考の積み重ねによって成り立つ“創造のプロセス”です。
今回は、「機械設計とは何か」を本質に置いたうえで、初心者でもわかる基本概念と3Dモデリング活用法について解説します。
要求を理解し、機能を構造に変換する
機械設計の出発点は、「何を実現したいのか」を正しく理解することです。
その要求を機能に置き換え、さらにそれを構造や寸法として定義していきます。
このときに必要なのは、単なる技術知識ではなく、意図を読み取る力=国語力です。
たとえば「軽くしたい」という要望の裏には、「搬送を容易にしたい」「コストを下げたい」「省エネを実現したい」といった目的が隠れていることがあります。
設計者はその本当の目的を正確に読み取り、最も合理的な構造・材質・機構を選ぶことが求められます。このフェーズは具体的な設計を行う前に始まります。
例えば、要求仕様を読んでいる時、またお客様と打ち合わせをしている時、AI全盛で「文字起こし」でさえ自動にできるような現在でも、打ち合わせ記録を作成できるスキルも必要だといえます。
ここから機能のイメージが作り始められることとなります。
構想設計が“設計の設計”である
設計において最も重要なのは、「図面を描く前の構想設計」です。
紙の上でスケッチを描きながら、構想設計を構想図として表します。
現在も、この方法は主流だと思います。いきなりCADを使って構想レイアウトを作成することはしません。筆者は、詳細設計でも新規設計要素の部分は、ペンと紙で構想図を描いてからCADで設計をします。
紙に書かれた設計図は、“機械の仕組み”を頭の中に構築したものを紙の上に表現したものです。
筆者はこれができなければ、3D CAD上でも良いモデルを作ることはできないと考えています。
構想段階では、「目的 → 機能 → 構成」という階層的な考え方を持つことが基本です。
部分だけを見るのではなく、全体の仕組みを俯瞰して考える「システム設計の視点」を持つことが大切だといえます。
このようにイメージ図を描くことのできるアナログ的なスキルはデジタル全盛の現在においても、設計者にとってはとても重要です。

筆者の描いた装置構成図

筆者の描いたV字ブロック ポンチ絵
図面・3Dモデルは「意思を伝える道具」
図面や3Dモデルは、設計者の考えを他の人に伝えるための“共通言語”です。
社内DRから始まり、製造や組立を担当する人に、設計意図、寸法、公差、材料、加工方法などを正確に伝えることで、初めて設計が完結するといえます。
3Dモデルや2D図面も单なるモデルや線ではなく、「設計意図」を示すものです。
その設計意図には、「寸法の根拠」「機能」「品質」が示されていなければなりません。
3D CADの可視化されたイメージにより、「だれでも形がわかる(3Dモデル)」を描くことができるようになりました。しかし、「形がわかればいい」というだけではなく、設計意図が伝わることが重要です。
このように設計者には「伝える力」が求められます。
形を描けても、意図を説明できなければ、それは設計とは言えません。
下のモデルはZW3Dによる設計で、どちらも同じ形になりますが、その設計意図は異なります。


「押し出し」後、ブーリアン「差」によりカット

ブーリアン後のモデル
ブーリアン後の3DモデルはA,Bどちらも同じ形になりますが、その設計意図は、Aはスケッチ寸法つまりカット後残された寸法に重要性があり、Bはカットする部分の寸法に重要性があるといえます。例えばAでは残された部分が他の部品に組み込まれる、Bではカットされた部分に他の部品が組み込まれるという意図があるといえます。どちらも2D図面化する際に同じように寸法を入れることは可能ですが、3Dモデル化において意図を示すことが、他の設計者との共有を行う上で重要です。
トップダウンとボトムアップ/ヒストリー型とノンヒストリー型ふたつの視点
3D CADを本当の意味で「使いこなす」ためには、単に機能や操作方法を覚えるだけでは不十分です。
同じモデリングでも、設計の考え方やアプローチが違えば、成果物の品質も、設計スピードもまったく異なるものになります。
なぜ同じ3D CADを使っていても、設計が早い人と遅い人がいるのか。
なぜある現場ではデータが生きた設計資産になるのに、別の現場では管理不能な“形だけのモデル”になってしまうのか。
その違いを生み出すのが、「設計の進め方」と「モデリング思想」という二つの視点です。
具体的には、設計の流れを示す「トップダウン/ボトムアップ」、そして形状生成の仕組みを示す「ヒストリー型/ノンヒストリー型」という2軸があります。
この2つの考え方を整理して理解することが、3D CADの本質を掴み、自社や自分に最適な設計手法を確立する第一歩になります。
しばしばこれらは混同されがちですが、実際にはまったく異なるレイヤーの話だと筆者は解釈しています。
「トップダウン/ボトムアップ」は設計の“流れ(プロセス)”を表し、「ヒストリー型/ノンヒストリー型」はモデリングの“手段(操作思想)”を表すものです。
この二つの軸を正しく理解し、現場の目的や設計体制に合わせて使い分けることができれば、
3D CADは単なる「作図ツール」ではなく、設計思想を可視化し、生産性を最大化するための“知的な武器”になります。
トップダウンとボトムアップ
トップダウン設計とは
トップダウン設計とは、装置全体の構想(上位レベル)から順に、構成要素(下位レベル)を詳細化していく設計手法です。つまり、「全体像 → 部分」へと段階的に設計を展開していく方法です。
● 基本的な流れ
①装置や製品全体の目的・仕様を明確化する
例:この装置は何をするためのものか。処理能力、寸法、出力、コスト、納期などを整理します。
②構成をブロックで分割する(システム設計)
全体を「ユニット」「モジュール」「機能ごとのブロック」に分け、各部分の役割を決めます。
例:搬送部、加工部、検査部、排出部など。
③ユニットごとに構造や部品構成を設計する
ブロック間の位置関係、取付位置、干渉、組立順序を3D CAD上で定義します。
④個々の部品を設計し、全体モデルに組み込む
最初に決めた寸法や拘束条件をもとに、各部品を作り上げていきます。

構成のブロック化
ボトムアップ設計とは
ボトムアップ設計は、既存部品や標準部品など“手持ちの要素”を積み上げて全体を構築する方法です。つまり、「部分 → 全体」へと組み立てていくアプローチです。
● 基本的な流れ
①使用できる既存部品・標準部品を整理する
モーター、ベアリング、ブラケット、ボルトなど、共通化可能な部品を活用します。
②それらを組み合わせて機構を構築する
既存パーツをもとに3Dアセンブリを作成し、干渉や位置関係を確認します。
③不足する部分を新規設計する
既存の構成に合わない部分や特殊な要素を追加設計します。
④全体モデルを完成させる
そして、現在では、次のトップダウンとボトムアップの併用としてのハイブリッド設計が主流となっているのではと筆者は考えます。
ハイブリッド設計とは
装置全体をトップダウンで構想しつつ、各ユニットや部品はボトムアップで作るというような流れです。
● 基本的な流れ
①トップダウンで全体の装置フレームや外形サイズを決める。
②ユニット単位で担当者がボトムアップ的に設計を進める。
③定期的に全体モデルを更新し、整合性を確認する。
この方法なら、全体の一貫性を保ちながらも、現場のスピード感を失わずに設計を進めることができるといえます。
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分類 |
設計方向 |
主な特徴 |
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トップダウン型 |
全体→部品 |
アセンブリ連携・上位構想重視 |
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ボトムアップ型 |
部品→全体 |
独立設計・柔軟操作・小規模向き |
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ハイブリッド型 |
双方向 |
履歴+ノンヒストリ併用・連携性高い |
設計手法による特徴
ヒストリー型とノンヒストリー型
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項目 |
ヒストリー型 |
ノンヒストリー型 |
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設計思想 |
形状は手順(履歴)で構成される |
形状は結果(完成形)で定義される |
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モデリング原理 |
スケッチ → 押出/回転 → フィレット等の手順をツリーに記録 |
ソリッド形状を直接変形・編集(手順を保持しない) |
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データ構造 |
履歴ツリー(Feature Tree)を持つ |
面・エッジ・ボディ単位の直接編集 |
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設計変更 |
スケッチ寸法・拘束値を変更して形状を再生成 |
面をドラッグや数値変更で修正(局所編集) |
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代表的な使い方 |
精密部品・設計変更・パラメトリック設計 |
リバースエンジニアリング・試作・意匠変更 |
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長所 |
寸法関係が明確で、設計意図を保持できる |
編集が高速で柔軟、形状変更が容易 |
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短所 |
履歴依存が強く、手順崩れ(リビルドエラー)が起きやすい |
意図・寸法拘束が失われやすい(再利用に弱い) |
ヒストリー型のCADは、「形状をどう作ったか」という履歴を重視する設計思想に基づいています。
設計者はまずスケッチを描き、それを押し出しや回転などの操作で立体化し、さらにフィレットやシェルなどの加工を順に積み重ねて最終形状を完成させます。この一連の操作手順は「フィーチャツリー」と呼ばれる履歴として記録され、後から自由に修正が可能です。
たとえば、ベースとなるスケッチ寸法を変更すれば、それに関連する形状がすべて自動的に再生成されます。これにより、設計全体の整合性を保ちながら効率的に変更が行える点が大きな特徴です。
つまりヒストリー型は、設計意図(Design Intent)をモデルの中に埋め込むことができる仕組みなのです。
これに対してノンヒストリー型CADは、履歴を持たず、完成した形状を直接操作する設計思想を採用しています。
形状を構成する面やエッジ、ボディをドラッグして変形したり、面を削除・延長することで即座に形を修正できるため、設計のスピードが圧倒的に速く、自由度が高いのが特徴です。
ノンヒストリー型では「どのように作ったか」よりも「今どうなっているか」が重要です。
つまり、結果重視のモデリングです。
設計手順や拘束関係は保持されないため、後から寸法関係を自動的に更新することはできませんが、その分、履歴に縛られずに思い通りに形を作り変えることができます。
この柔軟さは、改造設計や試作、治具設計、リバースエンジニアリングなど、短時間で形状を変更する必要がある現場作業に最適です。
ZW3D ― 設計思想と操作思想を統合したハイブリッドCAD
ZW3Dは、構想設計から詳細設計までを単一データ環境で完結できるという点では、トップダウン型設計を強く意識したものだと筆者は考えます。
アセンブリ内での拘束関係や、上位構造の寸法変更が下位部品に即座に反映される仕組みが整っており、全体整合を保ちながら設計を展開することが可能です。
一方でZW3Dは、個別部品の設計や既存データの流用にも非常に強く、
部品単位でモデリングを進めて後からアセンブリに配置する「ボトムアップ設計」もスムーズに行えるといえます。また、アセンブリ内で直接部品を編集できるため、従来の「トップダウン/ボトムアップ」という区別自体を意識せず設計できる柔軟さがあるともいえます。
言い換えれば、ZW3Dはトップダウンとボトムアップの中間点に立ち、両者の利点を併せ持つCADです。

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3Dモデリング活用法
筆者が強調したいことは、「設計プロセスとモデリング手法を一致させること」です。
構想設計では、最終形状を細かく定義するよりも、“全体のバランス”や“機構の動き”をつかむことが目的となります。この段階では、履歴に縛られず自由に形を試せる」ノンヒストリー的モデリングが有効です。
ZW3Dの機能にもある「拘束なしで形状を押し引きできる」というような環境は、まさにこの構想フェーズにおいて“アイデアを形にする速度”を高めるといえます。
設計が詳細段階に進むと、部品間の関係や公差、寸法拘束を厳密に扱う必要が出てきます。
このとき、ヒストリー型モデリングが効果を発揮します。
設計意図を表す寸法や位置関係を数式で定義しておけば、設計変更や派生設計にも対応しやすく、自動設計への可能性を持ちます。このように履歴化された3Dモデルは設計資産として長期的に再利用が可能となります。
つまり、構想段階ではノンヒストリー、詳細段階ではヒストリーというように、設計フェーズに合わせてモデリングの思想を切り替えることが重要で、これがまさにハイブリッド設計だといえるのです。
まとめ
ZW3Dを含む現在の3D CADでは、同じモデルでも設計者によって多様なモデリング手法が存在します。しかし本質的に重要なのは、「だれが見ても設計意図が理解できる図面=一元性のある図面を描くこと」です。
今後は、この「設計意図の伝わる標準化」こそが設計現場で求められるテーマであり、機会があればぜひこの点を掘り下げて議論していきたいと思います。
筆者プロフィール
土橋 美博
半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。
・ITコーディネータ
・二級知的財産管理管理技能士
・有限会社スワニーCIO
・マッケン・キャリアコンサルタンツ株式会社 パートナーエグゼクティブコンサルタント 3D設計プロモーター