IJCADはZWCADと同様に、日本のCAD業界で高い人気を誇っているDWG互換のCADソフトです。AutoCADとの高い互換性や、日本でお馴染みのインターフェースに加え、ほかにどのような強みがあり、どのようなニーズに適しているのでしょうか。
今回は、IJCADの機能面、AutoCADとの互換性、価格など多角的な視点から製品を詳しくレビューし、自社の業務に適しているかどうかを見ていきます。
IJCADの基本情報
IJCADは、システムメトリックス株式会社が開発・販売・サポートを一貫して手がけている2D CADソフトで、AutoCADとの互換性を意識して設計されています。日本語環境に最適化されており、国内ユーザーにとって使いやすいインターフェースや操作性が特徴です。
主に2D製図用として使われており、機械・建築・電気など、幅広い業種での基本設計や図面作成業務に活用されています。コストパフォーマンスを重視する中小企業や、AutoCADに近い操作感を求める設計者に選ばれるケースが多い傾向にあります。
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AutoCADとの互換性
IJCADのUIは、AutoCADに慣れたユーザーにも違和感の少ない構成となっています。リボンメニューやコマンドラインの配置も非常に似ており、移行時の学習コストを抑えることができます。
また、基本的な作図・修正コマンドの多くはAutoCADと共通あるいは類似しているため、これまでの操作習慣をそのまま活かしやすい設計となっています。
さらに、DWG形式の読み込み・保存にも対応しており、既存の図面資産をそのまま活用することが可能です。ただし、使用するDWGのバージョンによっては一部互換性に差異が生じる場合もあるため、運用前に確認しておくと安心です。
機能面のレビュー
基本機能
2D CAD製品は長年の進化を経て、基本機能に関しては各製品ともに十分に成熟しており、差異はそれほど大きくありません。
IJCADも例外ではなく、図面作成に必要な線分・円・寸法記入・レイヤー管理・ブロック作成といった基本機能は一通り揃っており、日常的な2D製図作業には問題なく対応できます。
高度な機能
基本機能はどの2D CAD製品でもほぼ共通している中で、他製品との差別化を図るポイントは、いかに実務で使える高度な機能が備わっているかにあります。
IJCADは、そうしたニーズにも応えるべく、インプレイス参照編集やダイナミックブロック、印刷スタイルの詳細設定(CTB/STB)など、実務レベルで求められる上級機能にも対応しています。
これらの機能は、図面の再利用性や編集効率の向上に直結するため、業務の生産性を重視する現場にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、パラメトリック設計や点群データの処理など、一部の高度な機能には現時点では対応していません。
3D機能
IJCADは主に2D製図向けに設計されたCADソフトであり、3D機能は限定的です。簡易的な3Dモデリング、3D座標系の設定、3Dグラフィックスの回転・画面移動といった基本的な操作には対応していますが、複雑なソリッドモデリングには対応していません。
2D CADソフトウェアで3Dモデルの閲覧や編集を行いたい場合は、AutoCADやZWCADなど、3D表示・編集機能を強力にサポートするソフトの使用をお勧めします。
ZWCADは「3Dモデリング」メニューを提供しており、モデリング、ソリッド編集と作成、ブーリアン、メッシュ、他形式へのエクスポートなどの機能が含まれています。また、100MBを超える大容量ファイルの読み込みおよび編集にも対応しています。

ZWCADの「3Dモデリング」メニュー
二次開発対応
カスタマイズや業務自動化のニーズに対応するため、IJCADはLISPや.NETに対応しており、業務フローに合わせた独自ツールの作成も可能です。
一方、VBAについては一部機能のみの対応、または条件付きのサポートとなっており、制限がある点に注意が必要です。
さらに、これらの二次開発向けAPIの多くは、STD版以上のエディションでのみ利用可能となっているため、導入時にはエディション選定も重要なポイントとなります。
ファイル形式の変換
多くのAutoCAD互換CADと同様に、IJCADも最新のDWGおよびDXF(2018形式)に対応しており、図面をPDF形式での出力も可能です。
一方で、一部の特殊なファイル形式については、上位エディションが必要となります。たとえば、Jw_cad専用のJWW形式ファイルの読み書きにはSTD版以上が必要で、STL、3DS、STEPなどの3D関連ファイル形式については、PRO版での対応となります。
価格とライセンス形態
IJCADのすべての製品はサブスクリプションライセンスへと移行しており、シングルライセンスでは月額プランと年額プランの両方が提供されています。
主力製品であるIJCADSTDをAutoCADと比較すると、価格はおおよそ半額程度となっており、ライセンスコストを抑えたい企業にとっては、導入のハードルが低いと言えるでしょう。
1ヶ月 |
1年 |
|
IJCADSTD |
¥4,950 |
¥39,600 |
AutoCAD |
¥8,800 |
¥73,700 |
サブスクリプション形式のメリットとしては、初期費用を抑えられる点や、契約期間の柔軟性が挙げられます。ただし、長期間継続して使用する場合、累積コストは従来の永久ライセンスより高くなる可能性もあるため、コスト面での判断は企業の利用期間や運用方針に応じて慎重に検討する必要があります。
また、IJCADは業種別に複数のソリューションを提供しており、特定業界のニーズに応じた機能構成が選べる点も特徴です。
ただし、製品はLT・STD・PROの3グレードに分かれており、さらにそれぞれにシングル、マルチ、USB、ネットワークといった複数のライセンス形態が存在するため、ラインアップがやや複雑でわかりにくい面もあります。導入を検討する際は、自社の業務内容・規模・使用環境を踏まえて、最適な組み合わせを選定することが重要です。
ZWCADとの比較ポイント
同じくAutoCAD互換製品として、ZWCADは日本国内でも高い人気を誇る2次元CADソフトです。
ZWSOFTが独自に開発したZWCADは、業界最高レベルのDWG互換性を備えており、25年以上の販売実績を有します。その信頼性と安定性の高さから、多くのユーザーに支持されています。
ZWCADの特長は、AutoCADとの高い互換性に加え、マルチコアCPUアクセラレーション技術によるスムーズなファイルの読み込み・保存が可能な点です。これにより、設計業務全体の効率化を実現します。

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さらに、リーズナブルな価格設定も大きな魅力です。一度購入すれば追加料金なしで永続的に使用でき、高いコストパフォーマンスが評価されています。ソフトウェアの運用コストを抑えたい企業にとって、有力な選択肢となっています。
以下に、IJCADとZWCADの主な違いを比較します:
比較項目 |
IJCAD |
ZWCAD |
対応ファイル形式 |
PDF・DWG・DXF・JWW・SXF |
JWW・DWG・DWF・DXF・DWT・DGN・PDF・IFC・SAT・STL・JPG・PNG・STEPなど |
使いやすさ |
AutoCADライクな操作性で、基本的な2D作図はスムーズ |
AutoCADとほぼ同等の操作感。コマンドやショートカットも高い互換性を実現 |
UIデザイン |
クラシック / リボン UI + CUIによるカスタマイズ対応 |
クラシック / リボン UI + CUI・ツールパレット・ワークスペース自由編集 |
基本機能 |
2D製図に必要な主要機能をカバー |
2D製図に必要な主要機能をカバー |
高度な機能 |
パラメトリック設計や点群データの処理など、一部の高度機能には未対応。ダイナミックブロック機能も限定的。 |
パラメトリック設計、フレキシブロック、ツールパレットなど、多彩な高度機能に対応。 |
3D機能 |
簡易的な3Dモデリングや座標系の設定、画面の回転・移動など基本操作に対応。 |
ソリッド・メッシュ・サーフェスなどの3Dモデリングに対応。画面操作やレンダリング機能も搭載。 |
二次開発対応 |
LISP、VBA(限定)、ARX、.NET に対応。 |
LISP、VBA、ZRX/ARX、.NET に対応。より柔軟なカスタマイズが可能。 |
料金 |
STD版:¥4,950/月・¥39,600/年 ※永久ライセンスなし |
¥103,000で買い切り。追加費用不要。 必要に応じて年間ライセンスも選択可能。 |
日本語サポート |
日本国内で開発・販売されており、日本語での電話・メールによる技術サポートが充実。 |
日本支社及び代理店による日本語サポート体制を整備。技術支援や導入支援も手厚い。 |
詳細な比較内容は関連記事「2025最新」IJCADとZWCADの違いを比較!どちらがCADユーザーに最適?」をご覧ください。
よくある質問
IJCADとAutoCADの違いは?
IJCADは低コストで基本的な2D設計機能を提供しています。一方、AutoCADは高度な3D設計や専門業種対応、自動化・拡張性、クラウド連携など、多機能かつ先進的な機能を備えています。その分、費用も高くなるのが一般的です。用途や予算に応じて適切に選択されることが多いです。
JWWファイルに対応している?
IJCADはJWWファイルの読み込みと書き出しに対応していますが、対応しているのは「IJCAD STD」および「IJCAD PRO」のグレードのみで、「IJCAD LT」は非対応です。JWWファイルはリボンメニューの「PLUS」タブ内にある「jww読み込み」コマンドから開くことができ、書き出しも同様に「jww書き出し」コマンドで可能です。
IJCADにモバイル版はありますか?
はい、IJCADには「IJCAD Mobile」というモバイル版アプリがあり、AndroidやiOSのスマホやタブレットで利用可能です。IJCAD MobileはDWG、DXF、JWW形式の図面の閲覧・編集に対応し、クラウドストレージ(Dropbox、OneDrive、Google Driveなど)を介してPC版と図面のやり取りができます。
IJCADはMacで利用できますか?
IJCADはWindows専用の2次元CADソフトであり、macOSにはネイティブ対応していません。ただし、Mac上でWindows環境を構築する方法(Boot CampやParallels Desktopなどの仮想環境)を利用すれば、IJCADを動作させることは可能です。
まとめ
IJCADは国産CADソフトとしての信頼性とAutoCAD互換性を兼ね備えたツールです。特に2D製図を主とするユーザーにとって、コストパフォーマンスに優れた選択肢となります。ただし、市場にある2D CAD製品はそれぞれ特徴や強みが異なるため、最も重要なのは自社の業務ニーズに合った製品を選ぶことです。