ものづくりにおいて、「図面通りに作る」ことは基本です。しかし、実際の加工現場では、機械精度、工具摩耗、温度変化、材料特性などの影響により、寸法を完全に一致させることはできません。
そこで必要になるのが、「サイズ公差(寸法公差)」です。

日本産業規格(JIS)では、2016年の改訂を機に「寸法公差」から「サイズ公差」へと用語が変更されました。これは国際規格との整合性を高めるための見直しです。現在の規格上の正式名称は「サイズ公差」となっています。本稿では、最新の規格用語に基づき、「サイズ公差」で解説を進めます。
サイズ公差は、単に加工誤差を許容するための数値ではありません。部品同士が正しく組み付くかどうかという組立性、製品が求められる性能を発揮できるかという機能性、安定した品質を維持できるかという品質保証、さらには加工難易度や製造方法に影響する加工コストにまで直結します。
サイズ公差は、極めて重要な設計要素です。サイズ公差の設定次第で製品の完成度は大きく変わるため、適切なサイズ公差は設計品質そのものを左右するといっても過言ではありません。
サイズ公差の基本概念
サイズ公差の定義
サイズ公差とは、基準寸法に対して許容されるサイズのばらつき範囲のことです。
例えば、20±0.02mmと指定した場合、19.98mm~20.02mmの範囲であれば許容されます。

ZW3Dでサイズ公差を入力している画面例
サイズ公差は、「どこまで許せるか」を明確にする設計ルールです。
サイズ公差はあくまで「長さ」や「直径」の大きさを規制するもので、「形状のゆがみ(平坦さ、直角度)」などは規制できません。より高度な精度が必要な場合は、幾何公差を併用します。
サイズ公差の種類
1. 普通公差(一般公差)
特に個別の指定がない箇所に適用される公差です。図面の隅(表題欄付近)に「JIS B 0405-m」のように一括して指示されます。
- 精級 (f): 精密な加工が必要な場合
- 中級 (m): 一般的な機械加工
- 粗級 (c): 鋳物や精度の不要な部分
- 極粗級 (v): 非常に大まかな寸法
2. 個別に指示する公差
特定の機能(はめあいなど)を持たせるために、寸法ごとに直接記入する公差です。数値による指示する場合、基準寸法に対して、許容される上限と下限を数値で示します。
はめあい公差(記号による指示)は、軸と穴を組み合わせる際に、その「きつさ(しめしろ)」や「ゆるさ(すきま)」をアルファベットと数字の組み合わせで指定する方法です。
例えば「H7」や「h6」といった表記がそれにあたります。一般に、穴は大文字(例:H7、G6)、軸は小文字(例:h6、g6)で表され、アルファベットが公差域の位置、数字が公差等級(IT等級)を示します。量産設計や機能部品の設計では欠かせない重要な指定方法です。
| 種類 | 内容 | 例 |
| すきまばめ | 常にすき間ができる(回転・スライド用) | H7 / g6 |
| しまりばめ | 常に重なりがある(圧入・固定用) | H7 / p6 |
| 中間ばめ | すき間か重なりのどちらかになる(位置決め用) | H7 / js6 |

ZW3Dで穴に公差を指定している画面例
サイズ公差の応用例
サイズ公差の応用例として代表的なのは、軸と穴のはめあい設計や、複数部品の公差累積を考慮した組立設計です。
例えば、回転部では適切なすきまを確保する必要があり、固定部では十分なしまりを持たせる必要があります。また、機能に直結する重要な寸法には厳しい公差を設定し、非機能部には一般公差を適用することで、品質とコストのバランスを取ることが可能です。このようにサイズ公差は、単に図面に数値を記入するだけのものではありません。製品の機能、信頼性、耐久性、さらには製造コストまで左右する重要な設計要素です。
サイズ公差一覧(代表例)
| 表示方法 | 例 | 特徴 |
| 両側公差 | 20±0.02 | 一般的 |
| 片側公差 | 20-0.03+0.01 | 機能重視 |
| 限界寸法 | 19.98/20.02 | 検査向き |
| はめあい | φ20H7 | 規格準拠 |
ZW3Dサイズ公差書き方/入れ方
ここからは、実際の3D CADでのサイズ公差の入力方法について「ZW3D」を例に紹介します。
ZW3Dは、3D CADとCAM機能を一体化した設計・製造向けソフトウェアです。部品設計やアセンブリ設計、2D図面作成に加えて、加工データ作成までを同じ環境で行うことができる点が大きな特徴です。設計から製造までのデータを一元管理できるため、データ変換によるトラブルや作業の手間を減らすことができます。
ZW3Dでは、JIS規格に対応した図面を作成することができます。3Dと2Dのデータがリンクしているため、設計変更への追従性があり、図面ミスを最小限に抑えながら、現場への正確な情報伝達が可能です。

コスパ最強の高性能 All-in-One 3D CAD/CAE/CAM
永久ライセンスで313,000円~
登録不要!フォームの入力だけでOK!
サイズ公差の入力手順
図面作成時に、寸法を入力する際にサイズ公差を指定することができます。寸法を付けた後でもダブルクリックからサイズ公差を入力、値の修正などすることも可能です。
画面左側の属性情報にサイズ公差のタイプを選択して、数値や記号を入力します。

ZW3Dのサイズ公差を入力する属性画面
注意点・効率的な設定方法
サイズ公差を入力する際には、誤った数値を入力しないように注意しましょう。特にゼロの数を間違えてしまうと精度が大きく変わりますので、慎重に入力し、入力後は間違いがないかチェックしましょう。
ZW3Dでは、様々なスタイルに対応しています。線の太さや矢印タイプなどを設定できますので、よく使用するスタイルを保存して使用することで、素早く効率よく図面を作成することができます。

ZW3Dスタイルマネージャ設定画面例

ZW3D基本設定画面例
サイズ公差に関するよくある質問(FAQ)
「サイズ公差」と「寸法公差」は違うのですか?
基本的な意味は同じです。日本産業規格(JIS)では、2016年の改訂により「寸法公差」という用語が「サイズ公差」に変更されました。これは国際標準化機構(ISO)との整合を図るためです。ただし、現場では現在でも「寸法公差」という言葉が使われている場合があります。
公差は厳しく設定したほうが良いのでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。公差を厳しくすると製品精度は向上しますが、加工時間や検査工程が増え、製造コストが高くなります。必要な機能を満たす範囲で適切な公差を設定することが重要です。
一般公差とは何ですか?
一般公差とは、図面上で個別に公差を指定していない寸法に対して適用される標準的な公差のことです。図面の注記欄に「JIS B 0405-m」などの規格を指定することで、未記入の寸法に対する許容範囲をまとめて定義できます。これにより、図面を簡潔に保つことができます。
サイズ公差と幾何公差の違いは何ですか?
サイズ公差は、長さや直径などの寸法の大きさの許容範囲を示します。一方、幾何公差は、形状や位置、姿勢などの幾何的な精度を示すものです。例えば、真円度や平行度、位置度などが幾何公差に該当します。実際の設計では、サイズ公差と幾何公差を組み合わせて製品の品質を管理します。
まとめ
サイズ公差(寸法公差)は、単なる数値指定ではなく、品質を保証するための設計ルールであり、部品の組立性を左右する重要な要素であり、さらに加工コストを大きく決定づける値でもあります。どの程度のばらつきを許容するかという判断は、製品の性能・信頼性・経済性に直結します。
そのため、適切なサイズ公差を設定するには、実際の加工能力を正しく理解し、製品が使用される環境や条件を把握し、複数部品が組み合わさる際の公差累積を検討することが欠かせません。加えて、CADツールを正しく活用し、設計意図を明確にデータへ反映させることも重要です。
ZW3Dを活用すれば、設計段階からサイズ公差を明確に定義・管理できるため、品質向上はもちろん、設計効率の向上や手戻り削減にもつながります。
機械設計のレベルを一段引き上げるためにも、「とりあえず公差を入れる」という姿勢ではなく、設計意図に基づいた意味のあるサイズ公差設計を実践していきましょう。
今回ご紹介した3D CAD「ZW3D」は、30日間の無料体験版がありますので、ぜひ、一度、お試しください。
30日間の無料体験版のダウンロードは、こちらから
https://www.zwsoft.co.jp/download-center/
【入門・初心者向け】ZW3Dの始め方と使い方について~3D CADの覚え方のコツ教えます~
https://www.zwsoft.co.jp/blog/zw3d-start-guide-cad-beginner/
筆者プロフィール(小原照記おばらてるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事長も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動や企業へ技術的なサポート支援もしている。WEBブログやSNS、YouTubeを「テルえもん」という名前で情報発信中。