近年、製品の高性能化・小型化・省エネルギー化が急速に進む中で、熱と流体の挙動を同時に検討する設計手法が強く求められています。

その中核となる技術が「熱流体解析」です。

従来は試作と実験を繰り返して確認していた冷却性能や温度分布も、現在では設計段階でシミュレーションにより事前検証することが一般的になりつつあります。本記事では、熱流体解析の基礎から、ソフトの種類・選び方、おすすめ製品までを分かりやすく解説します。

 

熱流体解析とは

熱流体解析とは、流体の流れ(速度・圧力)と熱の移動(温度・熱伝達)を同時に解析する手法です。

具体的には、以下の物理現象を組み合わせて解析します。

  • 流体の流動(強制対流・自然対流)
  • 熱伝導
  • 熱放射
  • 流体と固体間の熱交換

 

一般的なCFD(数値流体力学)は流れ解析が中心ですが、熱流体解析では温度分布や冷却効率まで含めて評価できる点が大きな違いです。また、熱解析単体では流れの影響を正確に捉えることが難しく、実際の使用環境を反映した検討には限界があります。

熱流体解析が活用される主な用途・業界

熱流体解析は、流体の流れと温度変化を同時に評価できることから、冷却性能の検証や熱対策が求められるさまざまな分野で活用されています。特に、製品の高性能化・小型化・省エネルギー化が進む現在、設計段階で熱挙動を可視化し、問題点を事前に把握する手段として重要性が高まっています。

業界・分野 主な活用内容
製造業(機械・自動車・航空宇宙) エンジン・モーター周辺の冷却設計、空力と温度上昇の同時評価、熱対策部品の最適化
電子機器・熱設計 筐体内部の温度分布解析、放熱構造の検討、ファン配置・通風経路の最適化
建設・土木・インフラ分野 空調・換気シミュレーション、室内温熱環境評価、地下空間やトンネル内の気流解析
エネルギー・化学・プラント設計  配管内流動と熱交換解析、設備全体の熱効率評価、高温環境下での安全設計

こうしたように、熱流体解析は業界や用途によって求められる解析内容や精度、操作性が大きく異なります。たとえば、詳細な物理現象を高精度で解析したいケースもあれば、設計初期に素早く傾向を把握したいケースもあります。

そのため、熱流体解析に対応したソフトウェアも、解析対象や利用目的に応じていくつかのタイプに分類されています。

熱流体解析が可能なCFDソフトの種類

熱流体解析は、流体解析(CFD)をベースとして、熱伝導・対流・放射などの熱現象を組み合わせて行われます。

多くのCFDソフトが熱流体解析に対応しており、用途や設計フェーズに応じて使い分けられています。

汎用CFDソフト(熱流体解析対応)

流体の流れと熱移動を高精度に解析できるCFDソフトです。自然対流や放射など幅広い物理モデルに対応し、主に詳細設計や研究開発用途で利用されます。

多物理場・統合CAEソフト

熱流体解析に加えて、構造解析や電磁場解析との連成が可能なタイプです。複数の物理現象が関係する製品や装置の解析に適しています。

CAD/CAE一体型CFDソフト

CAD環境上で熱流体解析を行える、設計者向けのCFDソフトです。設計初期段階での温度傾向や冷却性能の確認に向いています。

オープンソースのCFDソフト

ライセンスコストを抑えて熱流体解析を行えるCFDソフトです。研究・教育用途で多く利用され、導入・運用には一定の技術力が求められます。

おすすめ熱流体解析ソフト一覧

ZWPHOENICS

ZWPHOENICS(旧:PHOENICS)は、世界で初めて商用の熱流体解析ソフトとしてリリースされたCFDソフトであり、1981年の登場以来、40年以上にわたって世界中の研究機関や企業で活用されてきました。長年の開発と実績により、多くの複雑な熱流体問題の解析に対応してきた実績を持つソフトウェアです。航空宇宙、自動車、エネルギー、建築環境など幅広い分野で導入されており、信頼性の高い解析ツールとして知られています。

ZWPHOENICSは高い適応力を持ち、圧縮性・非圧縮性流体、層流・乱流、燃焼、化学反応、自由表面流など多様な物理現象を解析できます。特に、相変化を伴う二相流解析や混相流解析などの複雑な熱流体問題にも多くの実績があります。さらに、ZW3Dの3Dモデリング機能を統合したことで、CAD設計から解析までのワークフローを一体化でき、CADデータとの互換性を保ったままスムーズに解析を行うことが可能です。

PhoenicsによるCFD解析結果の可視化イメージ

また、製造業の設計・開発分野だけでなく、建築環境、医療、気象、海洋など幅広い分野で活用されており、汎用性の高さと豊富な解析機能が大きな特長です。長年の利用実績によって蓄積された解析ノウハウや情報量も多く、実務レベルの熱流体解析において信頼性の高いシミュレーション環境を提供します。

メリット
  • 世界初の商用熱流体解析ソフトとして40年以上の実績
  • CADデータとの互換性が高い
  • 3Dモデリングと解析を統合したワークフロー
  • 二相流・混相流など複雑な熱流体解析に対応
  • 適用分野が広く、汎用性が高い
  • 高機能ながらコストパフォーマンスが高い
デメリット
  • 高度な解析や大規模モデルには習熟が必要
  • 一部の自動化機能は限定的

AnsysFluent

AnsysFluentは、世界中で広く利用されている高精度CFDソフトです。乱流モデルや熱放射モデルが充実しており、複雑な熱流体現象を詳細に解析できます。非定常解析や大規模モデルの計算にも対応しており、航空宇宙、自動車、エネルギー分野で多く採用されています。

Ansys Fluentを用いた自動車外気流解析の画面

(画像出典:https://www.ansys.com/ja-jp/blog/whats-new-ansys-fluent-2025-r1)

さらに、各種物理モデルの組み合わせが可能で、設計段階だけでなく研究開発や最適化プロセスでも強みを発揮します。一方で、ライセンス費用が高く、操作・設定には専門知識が必要です。

メリット
  • 高い解析精度と信頼性
  • 豊富な物理モデル・解析オプション
  • 大規模・非定常解析にも対応
デメリット
  • ライセンスコストが高い
  • 専門知識が必要 

STAR-CCM+

STAR-CCM+は、プリ・ポスト処理を含む解析ワークフローが統合されたCFDソフトで、熱流体解析の自動化に強みがあります。設計変更を繰り返すようなケースでも効率よく解析を実行でき、複雑な形状や非定常解析にも対応しています。

STAR‑CCM+による自動車空力解析画面

(画像出典:https://www.idaj.co.jp/product/star-ccm/feature/)

また、パラメータスタディや最適化機能が充実しており、設計評価から性能改善まで幅広く活用可能です。導入・運用コストは比較的高めで、環境構築には一定のPCリソースが必要です。

メリット
  • ワークフローが一体化しており効率的
  • パラメータスタディ・最適化に強い
  • 複雑形状の解析に対応
デメリット
  • ソフトウェア構成が大規模
  • 導入・運用コストが高い

COMSOL Multiphysics

COMSOL Multiphysicsは、多物理場連成解析を得意とするCAEソフトで、熱流体解析と構造・電磁場解析を組み合わせた解析が可能です。モデル自由度が高く、独自方程式やカスタムモデルの追加も容易なため、研究開発用途で多く利用されています。

COMSOL Multiphysicsでの粒子追跡流体解析設定画面

(画像出典:https://www.comsol.jp/comsol-multiphysics)

また、解析結果の可視化やレポート作成機能も充実しており、複雑な物理現象をわかりやすく伝えることが可能です。一方、CFD専用ソフトに比べると流体特化機能は限定的で、初期設定の理解には時間を要します。

メリット
  • 熱流体+多物理連成解析が可能
  • モデル自由度が高い
  • 研究・開発用途での活用に適している
デメリット
  • CFD専業ソフトに比べて流体特化機能は限定的
  • 初期設定に慣れが必要

Altair CFD

Altair CFDは、高精度CFDソルバーを搭載した多物理場解析向けソフトで、流体解析や熱流体解析に加え、構造や振動との連成解析も可能です。高度な乱流モデルや非定常解析に対応しており、航空宇宙、自動車、エネルギー分野など、複雑な熱流体現象を高精度で再現できます。独自の有限体積法ベースのソルバーにより、安定性が高く大規模モデルでも効率的に解析が可能です。

Altair CFDによる熱流体連成解析結果

(画像出典:https://altairjp.co.jp/altair-cfd)

また、パラメータスタディや設計最適化機能が充実しており、製品開発の初期段階から詳細設計まで幅広く活用できます。高度な解析機能を活かすには一定の専門知識が必要で、初心者や簡易解析向きではない点は留意が必要です。

メリット
  • 高精度CFDソルバーで大規模モデルも安定解析可能
  • 熱流体解析と構造・振動解析の連成が可能
  • パラメータスタディ・最適化機能が充実
デメリット
  • 導入・操作には専門知識が必要
  • 高度解析では計算リソースを多く消費

SolidWorks Simulation( Flow Simulation)

SolidWorks Simulationは、CADと統合された解析環境を提供し、設計者が熱流体解析を直感的に行える点が特長です。形状修正から解析、結果確認までの流れがスムーズで、設計初期の温度傾向や冷却性能の把握に適しています。

SolidWorks Simulationによる統合構造解析

(画像出典:https://www.t-sol.co.jp/product/solidworks-simulation/)

操作が比較的簡単で学習コストが低く、設計プロセスに直接組み込めるため、設計者自身による検討が可能です。ただし、高度な乱流モデルや大規模解析には制限があります。

メリット
  • CADと統合され設計者が使いやすい
  • 操作がシンプルで学習コスト低
  • 設計初期での迅速な解析に向いている
デメリット
  • 高度な解析には制限あり
  • 大規模解析には不向き

Creo Simulation (Flow Simulation)

Creo Simulationは、CAD環境と統合された設計者向けCFDソフトで、熱流体解析を含む流体シミュレーションを設計プロセスの初期段階から活用できます。CAD上で直接解析が可能なため、形状修正や設計検討を繰り返しながら効率的に評価でき、設計の迅速化と意思決定の支援に適しています。

Creo Simulation Liveによる統合CFD解析画面

(画像出典:https://www.concurrent-engineering.co.uk/blog/introducing-creo7)

設計初期での冷却性能や温度分布の把握に強みがあり、直感的な操作性と解析ワークフローのシンプルさも特長です。ただし、高度な乱流モデルや大規模解析には制限があり、詳細設計や非定常解析には適さない場合があります。

メリット
  • CADと統合され設計者が直感的に解析可能
  • 設計初期段階での迅速な評価に強み
  • 操作がシンプルで学習コストが低い
デメリット
  • 高度解析や大規模モデルには制限あり
  • 詳細設計や非定常解析には他ソフト併用が望ましい

流体解析ソフトを選ぶ際のポイント

熱流体解析やCFDソフトを導入する際には、単に解析機能の多さだけでなく、設計業務やプロジェクトの目的に応じて最適なソフトを選ぶことが重要です。以下のポイントを参考に比較検討すると、効率的かつ信頼性の高い解析環境を構築できます。

  • 解析精度と対応モデル:ソフトが対応する物理モデルや解析精度は、解析目的に直結します。層流・乱流、単相・多相流、熱伝達や燃焼・化学反応など、必要な現象を正確にシミュレーションできるかを確認しましょう。
  • 操作性・UIの分かりやすさ:操作のしやすさやGUIの直感性も重要です。特に設計者が解析を行う場合は、複雑な設定を簡単に管理できるツールや履歴管理、解析ツリー機能などがあると効率的です。
  • CADデータとの互換性:CADデータのインポート・編集・連携がスムーズであることは、設計段階での解析効率に大きく影響します。CADと統合されているソフトや、主要CAD形式との互換性があるかを確認しましょう。
  • 計算速度・ハードウェア要件:解析規模や精度に応じた計算時間や必要なハードウェアリソースも考慮が必要です。大規模モデルや非定常解析では、計算速度やメモリ要件が選定基準に直結します。
  • コスト・ライセンス形態:ソフトウェアのライセンス費用やサブスクリプション、利用可能台数などのライセンス形態は、導入規模や予算に影響します。短期プロジェクトか長期利用かによって、適切な契約形態を検討しましょう。

よくある質問(流体解析ソフトの導入・活用)

CAEとCFDの違いは何ですか?

CAE(Computer-AidedEngineering)は、構造解析・熱解析・流体解析など、製品の性能を数値シミュレーションで評価する総称です。一方、CFD(ComputationalFluidDynamics)は、CAEの中でも流体の流れや熱伝達現象を専門に解析する技術を指します。つまり、CFDはCAEの一分野であり、流体挙動や熱流体現象を詳細に再現・評価することが目的です。

どの設計段階で流体解析ソフトを使うべきですか?

流体解析ソフトは、設計プロセスの初期段階から活用するのが理想です。概略設計では温度傾向や空気流れの傾向を把握し、詳細設計では部品形状や冷却性能の最適化に利用できます。早期に解析を行うことで、試作や風洞実験の回数を減らし、開発効率とコスト削減につなげられます。

構造解析・熱解析との違いは?

構造解析は部材の応力・変形・耐久性などを評価する解析、熱解析は温度分布や熱伝達を評価する解析です。流体解析ソフトでは、これらに加えて流体の流れや圧力分布、対流・熱伝達を含む熱流体現象を同時に評価できます。必要に応じて構造解析や熱解析と連成解析を行うことで、製品の性能をより正確に把握できます。

まとめ

熱流体解析ソフトは、解析精度や対応モデル、操作性、CADデータとの互換性、計算速度、コスト、サポート体制など、さまざまな観点から比較検討することが重要です。設計プロセスの初期段階から活用することで、試作や検証作業の負荷を軽減し、製品開発の効率化や品質向上につなげることができます。

また、各ソフトには得意分野や活用しやすい設計段階があり、用途や解析目的に応じて選定することが、より実務的で効果的な解析環境構築の鍵となります。熱流体解析を適切に取り入れることで、空力性能の改善、熱管理の最適化、エネルギー効率向上など、製品の競争力を高めることが可能です。

0 0 投票数
文章評価
guest
0 コメント
最古
最新 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る
フォームを入力

(*) 印は入力必須項目となっております。

ZWSOFT JAPAN株式会社は、お客様のプライバシーを尊重いたします。

ご記入いただいたお客様の個人情報は、主催者、共催者、ならびにZWSOFT JAPAN株式会社が指定した委託業者を除き、お客様 の承認を得ない限りいかなる第三者とも共有されません。

いただいた情報は、無料メール配信サービスや、電子メール、郵送、FAX または電話等の個別コンタクトによる製品やサービス、イベントおよびセミナーのご案内および匿名形式による統計や分析等を行うために使用させていただきます。

©2026 ZWSOFT CO., LTD.(Guangzhou)が全著作権所有。 ここで引用されている他のすべての商標は、それぞれの所有者に帰属します。
0
記事の感想をコメント欄へ!x