機械設計とは「機能を成立させる構造を構築し、それを検証するプロセス」であり、3D CADを用いることで設計と検証を並行して進めることが重要です。その設計プロセスの中で、設計者の思考を最も集約して表現する図面があります。それが「組立図」です。
一般的に組立図は、
-
部品を組み合わせた完成図
-
製品の外観を示す図面
と説明されることが多いかもしれません。
しかし実務の視点で言えば、組立図は単なる完成図ではありません。組立図とは、
- 製品機能を示す
- 製品情報を示す
- 組立性を示す
この3つを同時に表現する、設計の中心となる図面です。

図1 2D組立図と3D組立図
そして、その出発点となるのが「どこで仕事をしているのか」という視点、すなわち加工点(機能点)です。
加工点から始まる設計思考
機械は必ずどこかで仕事をします。
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位置を決める
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回転する
-
支持する
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搬送する
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密封する
この“仕事が行われる場所”が加工点です。
設計は本来、この加工点から始めるべきです。例えば位置決め機構であれば、ワークを支える面や、位置を決定する基準面が加工点になります。この基準が後工程の基準にもなるため、ここが曖昧であれば全体の精度や機能に影響が出ます。
したがって設計の順序は、
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まず加工点を定義する
-
そこから支持構造や機構を展開する
という流れになります。
しかし実際には、
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外形を決める
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筐体を描く
-
その中に機構を収める
という順序で進めてしまうことがあります。
この場合、外形が機能を支配してしまい、本来あるべき構造が成立しなくなります。設計は外側からではなく、内側(機能)から決める必要があります。図2は位置決め機構の構想段階でX・Y・Z方向の基準=加工点を決めた構想図です。

図2 構想段階で加工点を決める
組立図とは何か
組立図の目的を一言で表すと、「設計意図を関係者全員に正しく伝えること」です。
設計者が考えた構造や機能は、製造・調達・品質・サービスといった複数の部門によって実現されます。そのため、誰が見ても同じ理解が得られる状態で情報を表現する必要があります。
組立図は単なる形状の説明ではなく、「なぜこの構造なのか」「どのように成立しているのか」を共有するための図面です。
つまり組立図は、設計者の思考を他者に伝えるための“共通言語”と言えるのです。
製品機能を示す ― 構造は機能の表現
組立図の第一の役割は、製品の機能を構造として示すことです。
重要なのは形状そのものではなく、「関係性」です。
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荷重の作用の位置はどこなのか
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どこで支持しているのか
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どこが固定で、どこが自由か
これらが明確に整理されていなければ、機能は成立しません。
加工点を起点として基準を設定すれば、寸法の流れ(寸法連鎖)は自然と整理されます。
一方で外形基準で設計を進めると、基準が曖昧になり、設計意図が伝わらなくなります。
組立図とは、言い換えれば機能を表現した論理図なのです。
製品情報を示す ― 情報の集約点
組立図は構造だけでなく、製品情報の集約点でもあります。
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部品番号
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数量
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締結方法
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サブアセンブリ構成
これらの情報が整理されることで、製造・調達・品質・サービスなど、各部門が同じ理解を持つことができます。
ここで重要なのは、図面の役割を明確に分けることです。加工寸法は部品図で管理し、組立図では「構成」を示すことに集中します。役割を分けることで、情報の伝達は格段に明確になります。

図3 3Dアセンブリより表示した構造部品表

図4 組立図への部品番号と部品表記入例
組立性を示す ― 成立性の検証
機能が成立していても、組み立てられなければ製品にはなりません。
組立図は、組立性を検証するための重要な手段でもあります。
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部品は順番に組み込めるか
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工具が入るスペースはあるか
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締結作業は可能か
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調整が必要な場合、その機構はあるか
例えば、
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内部部品を後から挿入できない構造
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ボルトに工具が入らない配置
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最後の1本が締められない構成
これらはすべて設計段階で防ぐべき問題です。

図5 3D分解図による組み立て性検証
3D CADでは分解図や干渉チェックを活用することで、組立手順や作業性を事前に検証できます。さらに近年では、3Dデータを用いた仮想組立(VR)による検証も可能になっています。
機能と組立性は衝突する
ここで重要なのは、機能と組立性はしばしばトレードオフの関係にあるということです。
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機能を優先すると構造は複雑化する
性能向上のために部品点数や機構が増え、構造は複雑になります。
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剛性を上げると重量とコストが増加する
補強や一体化により、加工負荷や材料コストが増加します。
-
精度を追うと調整やコストが増える
高精度化により、調整機構や厳しい公差が必要になります。
これらはすべて設計上の判断であり、どれが正しいというものではありません。組立図を通して、機能・構造・組立性・コストのバランスを可視化することができます。
再現性という設計の視点
さらにもう一つ重要なのが「再現性」です。
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誰が組み立てても同じ性能になるか
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ロットが変わっても安定するか
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調整に依存しない構造になっているか
設計基準と組立構造が一致していなければ、再現性は得られません。
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どこで誤差を吸収するのか。
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どこを基準として固定するのか。
これらを考える場こそが、組立図なのです。
まとめ ― 組立図は設計そのものである
組立図は単なる完成図ではありません。
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機能を表現し
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情報を整理し
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組立性を検証し
-
再現性を担保する
設計の中心となる図面です。そしてその出発点は、加工点という「機能の起点」にあります。
前回解説した設計プロセスにおいて、組立図は設計者の思考を可視化し、成立性を検証する場です。
近年では、ZW3Dのような3D CADを活用することで、
といった設計情報を一貫して扱うことが可能になっています。

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これにより、組立図は単なる図面ではなく、設計・検証・情報共有を統合するプラットフォームとして機能します。さらに重要なのは、これらの検証を設計初期から繰り返し実施できる点です。
従来のように試作後に問題を発見するのではなく、構想段階から組立図と3D CADを連動させることで、設計の早い段階で不具合の芽を摘むことができます。
また、設計変更が発生した場合でも、アセンブリと部品が連動して更新されることで、構造の整合性を維持したまま修正を進めることができます。これは、量産時の品質安定や手戻り削減にも直結します。
機械設計とは、形状を作ることではありません。
機能を成立させる構造を構築し、その成立性を検証し続けるプロセスです。
ZW3Dのような3D CADを活用することで、組立図はその設計プロセスを支える中核として、より大きな価値を持つようになります。
筆者プロフィール
土橋 美博
半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。
・ITコーディネータ
・二級知的財産管理管理技能士
・有限会社スワニーCIO
・マッケン・キャリアコンサルタンツ株式会社 パートナーエグゼクティブコンサルタント 3D設計プロモーター