CADとは?CADと設計の違いについて
CADとは、Computer Aided Designの略称で、直訳すると「設計を支援するコンピュータ」です。CADは、2D CADと3D CADとに大別されます。
2D CADでは2D設計が行えます。3D CADは3D設計と2D設計の両方を行うことができます。誤解されている人も多くいるかもしれませんが、3D CADでも「スケッチ」機能を使うことで2Dでの設計検討が可能で、3Dモデルから2D図面をつくることともできます。ソフトによっては、2D CADで設計した線データを3D CADに取り込めるものもあります。ちなみに、ZW3Dは取り込むことができます。

図1: ZW3Dで2DCAD(DXF)ファイルを読み込んで、3Dモデルを作成している様子
「CAD」と「設計」は別物だということを理解してください。「2D CAD」と「2D設計」は別なもので、「設計」と「製図」も違います。CADはソフトであり、製図は2次元の図面を作ることです。そして、設計は製品の機能を検討し、具現化していく作業になります。
CADは、設計作業を支援する道具になります。パソコンなどの電子的に処理を行う環境がなくCADがない時代は紙の図面で設計作業を行っていました。実際には3次元である形状をJIS(日本産業規格)などのルールにのっとり2次元の線で表現して設計を行っていました。紙の図面の作業には定規と鉛筆を使って手で線を描くため鉛筆の太さより細い精度は出せない問題や一本一本手で線を描いたり消したりする必要があるため修正や削除に非常に手間がかかる問題がありました。
2D CADが紙図面の作業を電子化することにより、精度が向上し、編集・削除などの作業が効率化しましたが、3次元の物体を仮想的に2次元として表現して処理するという点では変化はなく、形状が複雑になると2次元の図面から3次元の形状を想像するのが難しいという問題がありました。
それに対して、3D CADは単に紙の作業の電子化ではなく、3次元の形状情報(3Dモデル・3Dデータ)をそのまま取り扱えるように開発された支援ツールになります。
3Dモデルは、3次元の情報を持っているため、体積や重量の検討が行え、部品間の干渉部分の確認が行えるなど、設計者は実際に物を作る前に様々な検証を行うことができます。その他にも部品に材質や光源を設定し写真のようにリアルな画像を作成する「レンダリング」や板金設計や金型設計をするための専用の機能を搭載している3次元CADなどもあります。ZW3Dには、これらの機能が搭載されています。

図2:ZW3Dでの金型設計の様子

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2D CADと3D CADのメリットと機能比較
2D CADと3D CADの機能について比較していきます。(図3)
作図機能については、2D CADの方が一般的に優れています。図面作成については、作図機能は2D CADの方が優れ、隠線処理など見やすい図面をつくれますが、3D CADでは立体図を投影して三面図を自動生成でき、3Dモデルを修正すると図面も連動して修正されるため引き分けとしました。
2D CADで2D図面を作成した場合、正面図と側面図が合わない図面を描いてしまったり、線を描き忘れてしまったりなどの図面ミスが起きやすいです。形状の正確性は、3D CADは干渉や質量が確認できます。
データ活用については、3D CADの方がCAEやCAM、3Dプリンタなどに3Dデータの活用など幅広く活用できます。ただし、データ量は3D CADの方が情報量が多く容量も大きくなるため、データ保管には、外付けのハードディスクなどが必要になってきます。もしくはクラウドサービスを利用するのも良いでしょう。
価格については、一般的に3D CADの方が高価で、習得にも時間がかかります。用意するパソコンのスペックも2D CADよりも高スペックが必要でコストがかかります。コストは、かかりますが、3D CADを導入することで上記にあげた利点も多くあるため、多くの企業が3D CADを活用しています。
3D CADの習得に時間がかかる理由として、2D CADは、紙や鉛筆などを使って部品や製品を正面や横、上から見た図などを描く製図作業をコンピュータでデジタル化したものであり、従来の設計のやり方を大きく変える必要はありませんでした。しかし、3D CADは、パソコンの中に実際の部品や製品の立体形状を作成するもので、従来の製図作業や2D CADでの設計のやり方に+α(アルファ)の考え方が必要になるため、2D設計をしてきた人からすると、中々、考え方を変えることができずに習得に時間がかかってしまう場合があります。多くのメリットが3D CADにはあるので、めげずに習得に向けて頑張ってほしいです。
3D CAD | 2D CAD | 備考 | |
作図機能 | △ | ○ | 作図機能のは2D CADの方が一般的に優れている |
図面作成 | ○ | ○ | 引き分け、3D CADは三面図をミスなく自動でつくれる利点がある(設変も連動) |
形状の正確性 | ○ | △ | 3D CADは干渉や質量が確認できる |
データの活用 | ◎ | △ | CAE、CAM、3Dプリンタなどへの3Dデータ活用が行える |
データ量 | 多い | 少ない | データ量は3Dの方が多いので、データ保管に外付けハードディスクなど必要 |
価格・コスト | 高 | 安 | ソフトは一般的に3D CADの方が高い |
習得時間 | 長 | 短 | 習得時間、3D CADの方が一般的に必要 |
パソコン | 高 | 安 | 3D CADの方が高スペックなPCが必要 |
図3:3次元CADと2次元CADの比較
2D図面と3Dモデルの比較とメリット
アウトプットである2D図面と3Dモデルの違いについて、比較します。(図4)
サイズ(寸法)確認に関しては平面の2D図面の方が確認しやすいですが、形状認識については立体の3Dモデルの方が確認しやすいですよね。
提案力・プレゼン力は、形状に色を付けたり、背景を入れるなど魅力ある画像を作ることができる3Dモデルの方が優れています。
データ互換性については、2D図面も3Dモデルも中間ファイルがあり、データのやりとりができますが、3Dモデルの場合は面のデータも含まれ情報量が多くなり、データの受け渡しがうまくいかないケースもあります。
情報共有は、2D図面は紙やPDFで共有できて扱いやすいのに対して、3Dモデルは専用のソフトやアプリケーションが必要となります。最近では無料のビュワーやWebブラウザで形状を確認できるものも多く登場していて、3DモデルをVR(仮想現実)/AR(拡張現実)空間で表示、確認できるツールなどもあります。
3Dモデル(立体) | 2D図面(平面) | 備考 | |
寸法機能 | △ | ◎ | 寸法(サイズ)の確認は図面の方がしやすい |
形状認識 | ◎ | △ | 全体的な形状・デザインは立体で見た方が分かりやすい |
提案力・プレゼン | ◎ | △ | 色を付けたり、背景を入れたりすることでプレゼント力アップ |
データ互換性 | △ | ○ | 2D図面は、DWG、DXFでデータ交換が可能。3D CADは種類が多く互換性も様々 |
情報共有 | 専用ソフト | 紙・PDF | 図面は紙で配布しやすい。汚れても良いし扱いやすい |
図4:3Dモデルと2D図面の比較
2D図面の必要性
3D設計を行った場合、最終的なアウトプットとして、2D図面を作る必要はあるでしょうか。加工を外部に依頼する際に2D図面が必要だったり、社内での保管用に必要だったりと、それぞれの事情で2D設計、2D図面が必須な状況であることが多いことでしょう。当然2Dならではの良さもあるわけなので、2D図面を全くつくらないというのも少々乱暴な気もします。
しかし、3D CADで3Dモデルを作って、2D図面の作成もやってでは、設計者の負担も増えるばかりです。そこで提案したいのが、3D CAD移行に併せて、2D図面は簡易的なものにとどめ、“3Dモデルを正”にして仕事を進めるというアプローチです。
図5に示すような「3D図面」というものをご存じでしょうか。3Dモデルを正とした図面方式で、3Dモデルに直接、サイズ(寸法)や公差などを定義するものです。3Dモデルに直接付ける寸法や記号などの注記のことを「3Dアノテーション(3DA)」と呼びます。また製造情報のことを「PMI(Product Manufacturing Information)」と呼び、3Dモデルに製造情報を定義することを「MBD(Model Based Definition:モデルベース定義)」と呼びます。

図5:ZW3Dで作成した「3D図面」の例
3D CADには、2D図面を作成するための便利な機能が多くありますが、それでも2D図面を作成するのには手間が掛かります。日本での活用はあまり進んでいないが、欧米では2D図面を作らない3D図面によるモノづくりや、2D図面は作っても簡易的なものにとどめた、3Dモデルを「正」とするモノづくりにより、スピーディーな開発が進められています。
日本が海外の競合に対抗していくためにも3D CADの活用が今後、必要だと筆者は感じています。3Dモデルを「正」にした、“3Dデータを中心にしたモノづくり”を行うためには、これまでのルールに縛られることなく、新しいルールを作っていく必要があります。協力会社との連携や検査などの観点から変えていくのは簡単なことではありませんが、少しずつでも2Dから3D CADへの移行を進めていって欲しいです。
3D CADの導入について
3D CADは、立体図を作成するためだけのソフトではありません。立体形状にすることで2D図面よりも形状認識がしやすくなるのはもちろんですが、断面を切ったり、組み立て性の検討や部品と部品の干渉チェックを行ったり、材料を指定して質量や重心を確認したりといったことが可能です。
3D CADで作成した3Dモデルを使用して構造解析や熱、流体などのシミュレーション(CAE)、加工プログラムの作成(CAM)なども行えます。最近では3Dプリンタを活用し3D CADで作成したモデルをそのまま3Dプリントし、物理的なモノとして手にすることも可能です。3D CADを活用することで、設計ミスを減らし、品質向上、コスト低減、納期短縮などにつなげることができます。
CADソフトはあくまでも道具(ツール)です。道具をうまく使いこなし、使い分けていくことが重要です。CADを使用して業務を改善、改革していくには、これまでの業務フローを見直し、変えていくことも重要です。3D CADを導入するのであれば、2D CADで仕事をしていたときとは別の社内ルールや業務フローが必要になります。それらを検討する際は、くれぐれも設計者の負担が増えないように注意して欲しいです。
3D CADの導入は、ITシステムの導入と同じです。モノづくりに関わる全ての人が“3D”を活用することで、その価値を最大化できます。3Dの最大のメリットは、誰でも形状を認識でき、皆でモノづくりができることです。
そして、何よりも取り組みやすく働きやすい環境を整えることが非常に重要となります。実際に3D CAD活用を社内に広めていく上で重要なのは、何よりも“皆が喜ぶことをする”ことです。皆様が3Dを活用し、より良いモノづくりが行える日本になることを筆者は心から祈っています。
筆者プロフィール(小原照記 おばらてるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事長も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動や企業へ技術的なサポート支援もしている。WEBブログやSNS、YouTubeを「テルえもん」という名前で情報発信中。
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