ZWCADには数多くの便利な機能がありますが、その中でも図面の確認やプレゼンテーション、印刷時に重要な役割を果たすのが「ビューポート」です。図面を描いていると、「異なる部分を同時に見たい」「縮尺を変えて複数のビューを並べたい」といった場面が頻繁に出てきます。そんなときに活躍するのがビューポート機能です。
ビューポートとは何か、その定義と主な用途
ビューポート(Viewport)とは、一つの図面内に複数の視点や縮尺のビューを表示するための「窓」のことです。特にレイアウト上での活用が多く、印刷や図面提出において不可欠な存在といえます。
ビューポートの主な用途
モデルの異なる部分を同時に表示する
例えば建築図面であれば、平面図と立面図、詳細図などを同じレイアウト内に並べて確認することができます。
レイアウト上で異なる図面ビューを作成する
同じ図面でも縮尺を変えたり、表示範囲を切り分けたりして、複数のビューポートを配置することで、分かりやすいプレゼンテーション資料や印刷データを作成できます。
実務では、A1やA3などの紙面に「全体図」と「部分詳細図」を一緒に載せたい場面がよくあります。こうしたニーズに応えるのがビューポート機能です。
モデル空間ビューポートvsレイアウト空間ビューポート
ZWCADでは、作業効率や出力の目的に応じて、モデル空間ビューポートとレイアウト空間ビューポートの2種類のビューポートが用意されています。それぞれの用途や操作方法は異なり、適切に使い分けることで、設計作業や印刷・出力の効率を大幅に向上させることができます。主要な違いは、以下の表のとおりです。
比較項目 | モデル空間ビューポート | レイアウト空間ビューポート |
表示対象 | モデル空間内の設計図やオブジェクト全体 | 用紙空間上のシートに配置されたモデルの一部や異なる視点 |
目的 | 設計中の作業や複数のビューの確認 | 印刷・出力用のシート作成、異なる詳細表示の管理 |
作成方法 | – VPORTSコマンドで複数ビュー作成、ビューポート境界をドラッグで調整 |
– MVIEWコマンドで新しいビュー作成(長方形/オブジェクト/多角形) – VPORTSでプリセット構成適用 |
ズーム・パンの影響 | 選択中のビューポートのみ影響 | 選択中のレイアウト空間のビューポートのみ影響 |
オブジェクト編集 | モデル空間のオブジェクトを直接編集可能、編集結果は全てのビューポートに反映 | レイアウト内で表示内容の調整のみ可能(オブジェクト編集はモデル空間で行う) |
カスタム設定 | 名前付きビューポートの保存が可能(VPORTSで指定) | 複数のビューポートを使い、異なる縮尺・表示内容を1枚のシートに配置可能 |
利点 | 設計作業を効率化、複数ビューを同時確認 | プリント・出力用に異なる詳細や縮尺をまとめられる |
モデル空間ビューポート
「モデル」タブをクリックするとモデル空間ビューポートが表示されます。複数のビューポートを使用することで、モデル空間の異なる領域や視点を同時に確認でき、1つのビューポートで頻繁にズームやパン操作を行う手間を減らせます。
ビューポートの作成
ZWCADには標準的なビューポート構成が用意されています。モデル空間に複数ビューを作成するには:
- VPORTSコマンドを実行
- 希望するプリセット(例:2分割ビュー、4分割ビュー)を選択
- 太い枠で囲まれたビューポートが現在のビューポートになります
注意点:
- ビューポートごとに表示される領域は異なりますが、図形自体は同じです。
- 現在のビューポートでオブジェクトを作成・修正すると、全てのビューポートに反映されます。
- ズームやパン操作は現在のビューポートにのみ影響します。
- 別のビューポートをクリックするとそのビューポートが現在のビューポートになります。<Ctrl+R>で複数ビューポートを順番に切り替えることも可能です。
- VPORTSコマンドで「単数」を選択すると、単一ビューポートに戻せます。
ビューポートの変更
モデル空間のビューポートは、次の方法で調整・カスタマイズできます:
- 構成の切り替え: ビューポート左上の[+]または[-]コントロールをクリックして、ビューポートレイアウトを切り替え
- サイズ変更・削除: ビューポート境界をドラッグしてサイズを変更。別の境界と重なると、ビューポートは削除されます
- 名前付きビューポート構成: VPORTSコマンドを実行して現在の配置に名前を付け保存。後で再利用可能です。

業界 最高レベルのDWG互換性! 販売実績25年
信頼できる2次元CAD
登録不要!フォームの入力だけでOK!
レイアウトビューポート
「レイアウト」タブをクリックするとレイアウトビューポートが表示されます。複数のレイアウトビューポートを使用して、異なる詳細や視点を同一シート上で表示でき、印刷やエクスポートも可能です。
ビューポートの作成
デフォルトでは、用紙空間に全体を覆う1つのレイアウトビューポートがあります。新しいビューポートを追加するには:
長方形ビューポート
- MVIEWコマンドを実行
- 2点の対角を指定して長方形のビューポートを作成
オブジェクトを基準にしたビューポート
- MVIEWコマンドを実行
- エンティテイを選択
- 閉じたオブジェクト(ポリライン、円、楕円、スプライン、領域)を選択して新しいビューポートとして作成
多角形ビューポート
- MVIEWコマンドを実行
- ポリゴンを選択
- ポリラインで多角形を描画し、内部のポリゴンをビューポートとして作成
プリセット構成
- VPORTSコマンドを実行
- 希望するビューポート構成を選択し、レイアウト空間に適用
ビューポートの変更
- ビューポート境界をドラッグしてサイズを調整、または削除
- [+]または[-]コントロールでレイアウトの配置を切り替え
- 名前付きビューポート構成もVPORTSコマンドでレイアウト空間に適用可能
複数ビューポート作成のコツ
複数のビューポートを扱う際は、次のようなポイントを意識すると効率的です。
シチュエーション | おすすめの設定 |
全体図と部分詳細図を同時に表示したい | 矩形ビューポートを2つ作成し、それぞれの縮尺を調整して表示 |
異なる方向からのビューを比較したい | モデル空間でVPORTSコマンドを活用して複数ビューを作成 |
特定部分だけを強調して表示したい | 多角形ビューポートを作成して任意の範囲を表示 |
設計変更前後の比較を行いたい | 2つ以上のレイアウトビューポートを作成し、異なる図面やバージョンを表示 |
用紙上で異なる縮尺の図面を同時に配置したい | レイアウト空間で複数の矩形ビューポートを作成し、個別に縮尺を設定 |
断面図や詳細図を分かりやすく表示したい | オブジェクト基準のビューポートや多角形ビューポートを使用 |
複雑な図面の全体把握と部分確認を同時に行いたい | モデル空間で複数ビューポートを作成し、全体図と部分図を同時表示 |
このように、目的に応じて作成方法を選び分けることで、図面の見やすさが格段に向上します。
まとめ
ビューポートを適切に活用することで、モデル空間とレイアウト空間それぞれの特性を最大限に生かせます。これにより、図面の異なる部分や視点を効率よく確認でき、設計作業や印刷・出力の効率も向上します。操作に慣れておくことで、作業のスムーズさや精度も高まり、より完成度の高い図面作成が可能となります。