自社に合った3D CADを選ぶために ― 基礎からはじめよう

  • どんな3D CADを選定したらいいのだろう?
  • 3D CADを導入したけれど、うまく使いこなせなかった
  • 別のCADに切り替えることになった

そんな話をよく耳にします。

多くの製品がある中で、どれが自社に合っているのかを見極めるのは簡単ではありません。このコラムでは、これから3D CADを選ぶ方に向けて、まず「3D CADとは何か?」からスタートし、その種類や選び方について解説していきます。

 

手描きから2D CAD、そして3D CADへ

設計の歴史を振り返ると、かつては「ドラフター」と呼ばれる製図台で手描きの図面が一般的でした。そこから「2D CAD(2次元CAD)」が登場し、線を引いたり消したりといった作業がコンピュータ上でできるようになりました。

2D CADのメリットは多く、例えば次のようなものがあります。

メリット
  • 消した線を元に戻せる
  • レイヤー(階層)を使って部品を分類できる
  • ライブラリで設計データを流用できる
  • 精度の高い設計が可能になる

2D CAD図面

筆者自身も、2D CADによって設計効率が大きく向上したことを実感しました。しかし、次第に2D CADだけでは限界も見えてきました。

2D CADの課題と限界

2D CADでは、たとえば以下のような問題が起きがちです。

  • 組立図から部品図を再度描き直す手間
  • 図面の改訂漏れによるトラブル
  • 部品同士の干渉や剛性不足が設計時に分からない
  • 組立や保守性の確認が困難

このような課題を解決する手段として登場したのが「3D CAD」です。

関連記事:CADの種類と特徴まとめ|建築・機械・電気設計向けCAD完全ガイド

3D CADとは?

3D CAD(3次元CAD)は、コンピュータ上で立体的な形状を作成・確認できる設計ツールです。モニタ上で立体を回転させたり、断面を見たり、アニメーションで動きを確認したりできるため、「誰にでも伝わりやすい設計」が可能になります。

2Dの図面を読めなくても、形状を見れば理解できる──これは設計部門だけでなく、営業・製造・品質管理といった他部門との連携にも大きな効果をもたらします。

3D CADでできること

3D CADを導入すると、設計業務が単に「形を描く」作業から「課題を先回りして解決する」段階へ進化します。主な利点は以下のとおりです。

メリット
  • 設計を立体的に見える化できる(可視化)
  • 干渉チェックや強度解析(CAE)でトラブルを事前に発見
  • 製造工程を早期に検討できる(フロントローディング)
  • 設計と製造を同時並行で進められる(コンカレントエンジニアリング)
  • 組立手順書や作業指示書を設計段階で準備可能

つまり、3D CADは「後から直す」のではなく「最初から正しく設計する」ための強力なツールなのです。

3D CAD図面

3D CADは“未来の仕事の土台”

3D CADは、今や高品質・低コスト・短納期といった市場からの厳しい要求に応えるためのインフラです。 設計部門に限らず、営業・製造・品質・保守といった社内外の業務にデジタルデータを共有することで、業務の効率化や品質向上を実現できます。

特に日本の製造業にとって重要なのは、熟練者のノウハウを若手にも分かりやすく引き継ぐこと。そのためにも、3D CADは単なるツールではなく「設計情報を見える化する手段」として、大きな価値を持っています。

では、そんな3D CADにはどんな種類があるのでしょうか?どう選べばよいのでしょうか?

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ヒストリー型とノンヒストリー型、そしてカーネルとは?3D CADの“中身”を知ろう

3D CADを選ぶ際、「操作性」や「機能」はもちろん重要ですが、もっと根本的な違いとして「ヒストリー型」と「ノンヒストリー型」という分類があるのをご存知でしょうか?

ヒストリー型(フィーチャーベース)

ヒストリー型CADは、設計の過程を「履歴(ヒストリー)」として記録し、それを積み重ねる形でモデルを構築していきます。

例えば「スケッチ→押し出し→穴あけ→フィレット(R)/面取り」といった手順がすべて記録され、その順番には設計者の意図が記録されています。

この方式の長所は以下の通りです。

メリット
  • 設計意図を維持できる:履歴構造から設計の考え方をたどれる
  • 設計変更がしやすい:過去の操作に戻って修正できる
  • 構造化された設計に向いている:パラメトリック※に組み立てやすい

※パラメトリック形状を作る際に「パラーメーター」として寸法を定義します。

一方短所は以下の通りになります。

デメリット
  • 履歴エラーが起きやすい:過去の操作との整合性が崩れると編集が難しいことも。
  • 修正に時間がかかる:履歴の順番に従って修正しないといけないことがある。
  • 他人の設計が読みづらい:複雑な履歴を理解するのに時間がかかる場合もある。

ノンヒストリー型(ダイレクトモデリング)

ノンヒストリー型は操作履歴を持たず、モデルそのものを直接編集するスタイルです。形状をクリックして押したり引いたり、穴を動かしたりといった「直感操作」が可能で、CAD初心者や、試作段階でのスピーディな編集に向いているともいえます。

この方式の長所は以下の通りです。

メリット
  • 操作が直感的:3D形状をそのままいじる感覚
  • 履歴エラーがない:修正が軽快
  • 他人のモデルも扱いやすい:履歴に縛られないので引き継ぎがスムーズ

一方短所は以下の通りになります。

デメリット
  • 設計の意図が残らない:履歴がないため、変更理由が追えない。
  • 寸法や拘束の管理が難しい:パラメトリックな設計に不向き。
  • 複雑な部品構成には不向き:制御性や再利用性が低くなる。

筆者は「設計図とは設計者の意図を示すものであり、一義性をもたなければならない」と考えます。そこで、履歴のわかる設計意図を示すことができるヒストリー型(フィーチャーベース)をおすすめします。

カーネルってなに?― 3D CADの“頭脳”の話

ヒストリー型、ノンヒストリー型のタイプだけではなく、3D CADにはそのエンジンとしてカーネルがあります。3D CADを使っていても、あまり意識することがないかもしれませんが、3D CADには重要なエンジンが組み込まれています。

このカーネルの性能や特徴によって、「使いやすさ」や「精度」が変わってきます。

カーネルとは

カーネルとは、3D形状を「数学的に計算して管理するエンジン」です。

CAD上で形を作ったり、くっつけたり削ったり、穴を開けたり、フィレットをつけたり……といった操作は、すべてカーネルが計算しています。「カーネルはCADの頭脳」です。

カーネルの3D CADへの影響

影響する項目 内容
形状の計算精度 複雑な曲面や微細な寸法も正しく計算できるかどうかに直結します。 この精度は誤差に直結します。
演算処理の安定性 モデル形状はカーネル上の演算処理によって行われます。
データ互換性 他CADとのデータのやりとり(STEP、IGES、Parasolidなど)がスムーズかどうかはカーネルに依存します。
操作の自由度 モデリングの自由さ、複雑な形状編集のしやすさもカーネル次第です。 ヒストリー型・ノンヒストリー型にも影響します。

なぜカーネルを意識すべきか?

なぜ、カーネルを意識すべきなのでしょうか。CADへの影響から以下のようにまとめます。

  • 作業の安定性:モデリング中にエラーで作業が止まると大きなストレスになります。
  • 3D取引データ互換性:同じカーネルならトラブルが少なく、外部取引先ともスムースにやりとり可能。
  • 将来性・保守性:カーネルが古いと、CADの進化も遅れがち。今後のアップデートにも影響します。このことは設計資産保守にとって重要。

このようにカーネルは、CADソフトの表には見えないけれど、「性能や信頼性を大きく左右する設計のエンジン」です。 クルマ選びで「エンジンが良いか」を気にするのと同じように、CAD選びでも「どのカーネルを使っているか」は、とても重要な視点なのです。

おすすめの3D CADソフト一覧:カーネル・タイプ・価格で選ぶ

では、今ある3D CADはどのようなCADのタイプなのかヒストリー型、ノンヒストリー型、カーネル、ハイエンド・ミッドレンジ※という視点でまとめます。

価格帯は大まかな数字で、別途保守費用が必要なものがあります。

製品名 タイプ カーネル クラス 価格帯(年間参考) 特徴・補足
ZW3D ハイブリッド型 ACIS互換+独自 ミッドレンジ 60万円台(STANDARD、永久ライセンス) ノンヒストリー+ヒストリーを選択可能
SOLIDWORKS ヒストリー型 Parasolid ミッドレンジ 約100万円 世界的定番。パラメトリック設計に強い
Fusion 両対応(切替可能) ACIS派生 ミッドレンジ 約32万円 クラウド+解析+CAMまで統合。コスパ抜群
IRONCAD ノンヒストリー中心 ACIS+Parasolid ミッドレンジ 約35万~100万円台 ドラッグ操作型、柔軟な構想設計に最適
iCAD-SX ノンヒストリー型 富士通独自 ミッドレンジ 約150万円 超高速ソリッド。自動機や装置設計向けに特化
Inventor ヒストリー型 ShapeManager(ACIS) ミッドレンジ 約40万〜60万円 AutoCADと親和性高い
NX ヒストリー+一部直感 Parasolid ハイエンド 数百万円〜 大規模設計・解析対応、シンクロナス編集可
CATIA ヒストリー型 CGM ハイエンド 数百万円〜 航空・自動車業界での標準、大規模サーフェスに強い
Creo ヒストリー型 Granite(独自) ハイエンド 約100万〜200万円 高精度な機構・解析設計。ジェネレーティブも実装
Solid Edge ヒストリー型 Parasolid ミッドレンジ 約100万円 ハイブリッド(ヒストリーベース+ダイレクト編集機能あり)
Onshape ヒストリー型(クラウド) Parasolid ミッドレンジ 約20万〜100万円 完全クラウド型。リアルタイム共同編集・履歴管理に強み

※ハイエンド:大企業や大規模製品・ハイテク製品に適した高性能・高価格帯。 ※ミッドレンジ:中小企業や個人向けの実用性能と価格のバランス型。

ここ数年で、3D CADにも「クラウド化」の波が本格的に押し寄せています。これは、単に「クラウド上にデータを保存する」という意味にとどまらず、「CADソフトそのものをクラウド上で動かす」時代が来ているということです。

このような機能性がある中での、トレンドと選定のポイントは以下のようになります。

3D CADのトレンド

トレンド項目 解説
クラウド化 ソフトをインストールせず、ネット経由で使えるタイプやクラウドでのデータ連携ができるタイプ
ヒストリー型+ダイレクト型のハイブリッド 履歴をもとに形を作る方式と、形を直接変える方式を組み合わせて使えるCADが増加中
価格の選択肢が広がった 無償〜高機能まで幅広く、目的に合わせて選べるようになってきた
CAM・CAEとの一体化 設計→加工→解析まで、1つのソフトで完結できるCADが求められている

3D CAD選定チェックポイント

観点 チェックポイント
操作性 自分やチームにとって使いやすいか、直感的な操作が可能か
機能範囲 設計だけでなく、加工(CAM)や解析(CAE)も対応可能か
価格帯 個人事業主・小規模企業にとって年間費用はどれくらいか
データ互換性 他社や他部門とデータのやり取りがしやすいか
将来性 開発元が安定しているか、トレンドに対応しているか

トレンドとチェックポイントから見るZW3D

項目 内容
開発元 ZWSOFT(開発共に長期的な継続ができる)
タイプ ハイブリッドCAD(ヒストリー型+ダイレクト編集)
機能構成 CAD+CAM+モデリング+2D図面作成が1つに統合
価格帯 個人事業主~中小企業が購入しやすい(買い切り・サブスク両方あり)
特徴
  • 操作が直感的で軽い
  • インポートできるファイル形式が多い
  • 金型設計や加工用ツールも豊富
  • 他社CADとの互換性が高い(IGES、STEP、Parasolidなど)
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みなさんの企業に適した3D CADを選定する上では、自社に適した機能性・拡張性、購入価格・年間維持費用をよく考える必要があります。

3D CADは企業にとってこれからなくてはならないインフラであり、仕事のやり方を変える製造業にとって中核になるDXだといえます。

筆者プロフィール

土橋 美博

半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。

・ITコーディネータ

・二級知的財産管理管理技能士

・有限会社スワニーCIO

・マッケン・キャリアコンサルタンツ株式会社 パートナーエグゼクティブコンサルタント 3D設計プロモーター

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